安全性の向上にも不可欠

 コネクテッドカーの活用は、ユーザー向けサービスの拡充だけを想定しているわけではない。コネクテッドカーから収集されるビッグデータは、不具合の傾向などを早めに検知することに活用できるのに加え、クルマの使い方など、詳細な情報を収集できる。

 これらを開発部門にフィードバックすることで、品質向上や実際の使用に適した製品開発につながる。

 トヨタはペダル踏み間違い時加速抑制装置の開発で、コネクテッドカーを使って一般ユーザーのペダルの踏み方のデータを収集し、踏み間違いを判定するアルゴリズムの作成に役立てた。トヨタのミッドサイズビークルカンパニーの田中義和チーフエンジニアは「明確な線引きがない踏み間違いと通常操作との切り分けを裏付けるデータはこれまでなかった」としており、コネクテッドカーのデータを有効活用した。

 コネクテッド技術は先進的な自動車の安全性向上にも欠かせない。車両は車同士や信号など交通インフラ、端末などで歩行者と通信することで多くの交通情報を取得できる。見通しの悪い交差点や片側複数車線の交差点の右折など、車両周辺の状況を把握するのに、車載センサーでつかめない死角を通信の情報が補う。

 自動運転「レベル4」(限定地域での完全自動運転)以上の車両に不測の事態が生じた場合、通信による遠隔操作が必要になる。遠隔操作では、運転席のドライバーが見る光景と、リアルタイムで同じものをモニターに映し出す必要があり、これには低遅延が特徴の第5世代移動通信システム(5G)が有望視されている。

 全国各地を動き回るコネクテッドカーをセンサーとして活用して、地域ごとのリアルタイムデータの収集に役立てることも想定されている。ブリヂストンは走行中のタイヤの状態をリアルタイムでモニタリングできるシステムをマイクロソフトと開発した。タイヤのトラブルの検知に加え、道路のくぼみや、危険要因の存在を通信を使って通知する。ブリヂストンの石橋秀一グローバルCEOは「クルマが唯一地面とつながっているタイヤは、コネクテッドによって新しい価値を創造できる」と期待する。

 トヨタはウェザーニューズと提携し、コネクテッドカーのワイパーの稼働状況と気象データから、道路とその周辺の気象状況を把握する取り組みを進めている。ワイパーは雨の時に稼働させるため、一般的な雨雲レーダーでは捕捉できない降水状況を、詳細に把握できる。