日産自動車は、新型電気自動車(EV)「N7」で中国事業の立て直しを急ぐ。「新エネルギー車(NEV)」で出遅れたが、日産の現地合弁である東風日産はN7を契機に、開発体制や販売網を見直した。輸出も予定する。日産は2027年夏までに計9車種を投入し、NEV市場で攻勢をかける。
N7は、車両価格約12万~15万元(約230万~300万円)で4月27日に発売した。約1カ月間の受注は1万7215台と出足は好調だ。供給に問題なければ小鵬汽車(シャオペン)や比亜迪(BYD)のEVセダンに割って入ることができると東風日産は期待する。
価格を抑えられた理由の一つが徹底した部品の現地調達だ。東風日産の呉越商品企画部長は、厳しい品質基準を保ちつつ「現地サプライヤーをフル活用した」と語る。現地チーム主体で開発し、約2年で発売にこぎ着けたことも特徴だ。
都市部に住む30歳代前半の家族をターゲットに、快適性と知能化をアピールする戦略も功を奏している。センサー内蔵型シートや現地テック企業「モメンタ」と組んだ運転支援技術なども装備する。
中国市場はコロナ禍後、「NEVシフト」が鮮明だ。地場の新興メーカーが先行し、運転支援技術や大型ディスプレーなど、先進性を打ち出したEVで消費者を引きつけた。この結果、ガソリン車が主体だった日本勢は販売が急減。日産の24年度の中国販売は69万7千台と、18年度の半分以下にまで落ちてしまった。
消費者が持つブランドイメージも、新興NEVメーカーとそれ以外ではっきりと分かれ、日本勢には「古いクルマづくりのイメージ」(呉氏)がつきまとった。N7は、こうした市場の認識を刷新する役割も担う。
東風日産は販売網改革にも取り組む。NEV専用の「配送センター」を整備し、オンライン上で車載アプリケーションの更新や整備の入庫予約、ユーザー同士が交流できるサービスなどを相次ぎ始めた。購入層の約7割が日産車を初めて買う35歳以下と、新規顧客の開拓にも一定の効果をもたらしている。
激しい値引き競争も各社の収益を圧迫していたが、中国政府は今年に入り、過度な競争を抑制するよう通達を出している。呉氏はN7の販売目標については明言を避けたが「志(こころざし)としては、基本モデルで合弁会社のナンバーワンを取りたい」と語る。
東風日産は、27年夏までに合わせて9車種を日産ブランドで発売し、SUVやプラグインハイブリッド車(PHV)など幅広く展開する予定だ。年内には旗艦モデルも発表する。また世界各国への輸出も予定しているという。
日産としては、鬼門だった中国事業を早急に立て直し、同国からの輸出も通じて日産全体の収益改善にもつなげていきたい考えだ。
(中村 俊甫)