つながる技術は、自動車流通業界でも活用され始めている。法人がメインの自動車リースでは、独自展開するコネクテッドサービスで得られた契約車両に関する運行データを基に、車両の適正配置の提案や、安全運転の指導に役立てられている。
住友三井オートサービス(露口章社長、東京都新宿区)は、車両、運行データを活用した新たな商品を開発した。社用車の手配や業務に必要なレンタカー予約などを一括管理できる法人向けMaaS(サービスとしてのモビリティ)アプリで、顧客企業の保有車両や他社のリース車両の運行状況を管理する。顧客企業の保有車両全体のデータ全般を把握・分析することで、リース車両稼働の効率化を支援する。
日野自動車のグループ会社で金融商品を手がけるモビロッツ(木内宏成社長、東京都新宿区)は、コネクテッドトラックのリース商品への活用を目指す。リース商品はつながる技術を使って車両の位置情報や稼働状況などを把握し、利用状況に応じてリース料金を変動させるダイナミックプライシングの導入を検討する。
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コネクテッドカーから収集されるデータの予防整備への活用が本格化している。顕著なのが商用車だ。いすゞ自動車の「プレイズム」は、故障原因の約7割を占めるエンジンやトランスミッション、排ガス浄化装置をモニタリングし、異常検知すると通信を使って入庫案内するとともに、近隣整備工場に必要な部品を入庫前に準備する。
ディーラーではコネクテッドカーから収集したデータを、販売会社が保有する顧客のデータと紐付けすることで、新商品やサービスの開発につなげる動きもある。顧客の家族構成や職業、年収、趣味趣向といった顧客情報と、コネクテッドカーから収集した車両データを組み合わせることで、年代別や性別などで、クルマを使った人の動き方の傾向が見えてくる。首都圏のホンダ系ディーラーの営業担当役員は「新車販売で得られる顧客データは、他の業種と比べても質が高い。自動車関連だけでなく、新たなビジネス展開にも活用できる」と強調する。
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物流業界ではコネクテッドトラックを輸送の効率化に活用している。豊田通商は、複数の商用車ブランドのコネクテッドトラックのデータを連携するための標準仕様の策定に取り組んでいる。物流事業者は複数ブランドのトラックを保有しているケースが多いことから、データを標準化することで、これらを統合し、より効率的な運行管理を実現できる。
日本通運はソフトバンクグループ傘下のワイヤレスシティプランニングと連携し、5Gを活用して、積載データを可視化する実証実験を奈良県と東京都で実施した。5Gやセンサーなどを活用してトラックの荷室空き状態をリアルタイムで可視化し、位置情報データなども使用して積載率の低いトラックの空いているスペースの有効活用につなげることを想定する。
トラックドライバーの時間外労働の上限規制が24年から始まるのを前に、物流各社はドライバーの働き方改革に向けた対策を急いでいる。コネクテッドトラックによる車両データは、トラックの運行管理に活用でき、ドライバーの労働時間短縮につながることが期待されている。
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スマホ化するクルマを、社会問題の解決につなげる動きもある。沖電気工業は、「あおり運転」をリアルタイムで遠隔監視するリモートモニタリングシステム「フライングビュー」の21年度の商用化を目指している。AIエッジコンピューターに俯瞰映像合成機能を組み込み、4台のカメラ映像から車両周囲360度の俯瞰映像を合成して受信機に映像を表示する。映像はネットワークに接続しており、遠隔からでも自由な視点で車両をモニターできる。同システムを活用することで、あおり運転する危険車両を、リアルタイムに監視できる。
綜合警備保障は、このシステムを警備モデルに活用できないかを検証している。将来的に、システムの映像を監視センターに送信することで、危険車両から運転者を見守るサービスに加え、警備員の派遣や警察への通報といったサポートも視野に入れている。