スズキが電気自動車(EV)市場に本格参入する。世界戦略車「eビターラ」を欧州やインドに投入するほか、日本でも2025年度内に発売する。欧州市場のEVをベンチマークに、軽自動車や小型車づくりで磨いた「小・少・軽・短・美」の技術力と、トヨタ自動車の電動車のノウハウを融合した。欧州で二酸化炭素(CO2)排出量規制が強化される中、スズキはeビターラの投入で規制に対応するとともに、欧州でのシェア拡大を狙う。日本では今後拡大が見込まれるEV市場への足がかりとする考えだ。
スズキは欧州の企業平均燃費(CAFE)規制を受けて、CO2排出量の多い「ジムニー」や「スイフトスポーツ」のEU(欧州連合)での販売を終了している。規制に対応するためにはガソリン車の燃費改善だけでは難しく、電動車の販売を増やす必要があるため、eビターラの投入を積極化していく考えだ。
eビターラという車名を採用したのも、欧州など海外で定着しているSUV「ビターラ(日本名エスクード)」のネームバリューを最大限に生かして販売につなげるためだ。日本でもeビターラを採用する。
ボディーサイズは、全長4275×全幅1800×全高1640mm。BセグメントSUVで、2WDと4WDを設定し、電池は49kWh(2WDのみ)と、61kWhの2種類を用意。航続可能距離(2WD)はそれぞれ400km以上、500km以上を見込む。
日本や欧州など降雪地域での利用を想定し、4WD「オールグリップe」も設定する。スズキの日本での4WD比率は2~3割程度だが、小野純生チーフエンジニアは「悪路だけでなく普段使いで魅力のある4WDに仕上げた」といい、eビターラを通じて4WD比率を高めていくことも視野に入れる。
電池は、安全性やコスト競争力などを踏まえ、比亜迪(BYD)傘下の弗迪電池製のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を採用した。eアクスルはブルーイーネクサス製を採用。幅を抑えるなどで小型化した。
今回採用したEV専用プラットフォームの「ハーテクトe」では、1180メガパスカルのハイテン材(高張力鋼板)の使用率を従来の約2倍とし、軽量化と高剛性を両立した。フロア下メンバーを廃止したことで電池容量も最大化。eビターラの随所に「小・少・軽・短・美」をちりばめた。
eビターラはインドのグジャラート工場で生産し、各地に供給する。スズキはインドを「輸出ハブ」と位置付けており、EVでもインド生産のスケールメリットを生かしていく。
すでに英国では発売しており、ノルウェーでも受注を開始した。価格は、英国で2万9999ポンド(約583万円)から、ノルウェーは33万4500クローネ(約484万円)からに設定した。英国ではビターラ(2万7299ポンドから)との価格差を1割高に抑えている。
スズキ初のEV、日本での価格が注目される。