政府が掲げる2050年のカーボンニュートラルの目標達成に向けて、電動車の普及を後押しする動きが出てきた。経済産業省は30年以降を見据えて電動車の普及策に関する議論を本格化した。「電動化推進」などをテーマにトヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど自動車関連企業が委員として参加し、充電インフラの整備や電動化技術などを焦点に、議論を進めている。
政府は30年代半ばに、国内でガソリン車の新車販売をゼロにする目標を打ち出し、東京都も30年までに都内で販売する新車をハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などに切り替える方針だ。
与党が昨年末に決めた21年度税制大綱で、「エコカー減税(自動車重量税)」が2年間延長されることになった。30年度の燃費基準をベースに60%以上満たした車両から適用していく。EVや燃料電池車(FCV)は車検時を含め2回免税を維持する方向。また、経済産業省と環境省は、次世代電動車の購入支援を行う。免税や購入支援の実施は、EVやFCVの販売の追い風となりそうだ。
EVのラインアップを拡充する動きは、国産車、輸入車を問わず活発化している。
国内メーカーでは、ホンダがEV「ホンダe」を発売し、日産自動車が「リーフ」に次ぐEVモデルとして新型車「アリア」を年央に発売する。1月にはマツダが「MX―30」のEVモデルを発売する予定だ。
輸入車もアウディ「e―tron(イートロン)スポーツバック」やポルシェ「タイカン」、プジョー「e―208」をはじめEVを相次いで投入してきた。
一方、パーク24が会員を対象に行ったEVに関するアンケート調査によると、EV購入にあたっては約半数が「価格」を重視した。EVの本格的な普及にあたっては、手ごろな価格の実現が鍵を握る。
また、FCVでは、トヨタ自動車が「ミライ」を2代目モデルとしてフルモデルチェンジした。発売前に主要都市で展示会を行うなど、アピールした。一部の地域ではメーカーとディーラーが協力して、シンポジウムや子ども向けの水素教室を開き、地域住民に向けて水素エネルギーの利活用によるメリットを伝えるなど啓発活動に力を入れている。FCVの普及には水素ステーションの拡充も必要で、さらなる設置が求められる。
日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長は、カーボンニュートラルの達成について「自工会として全力でチャレンジする」とコメントし、業界全体で挑戦していく姿勢を見せる。ただ、現状の延長線上では難しいとの見方も示しており、電動化を進めるに当たり必要なサプライチェーンを構築するための財政的な支援やエネルギー施策の転換が必要となりそうだ。