2024年4月、首都圏1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)の直営ホンダディーラーが統合するかたちで誕生したホンダモビリティ南関東(高橋宗一郎社長、東京都世田谷区)。社員数4200人超、拠点数は191に上り、自動車販売会社としては国内有数の規模を誇る。同社は統合を機に、組織改編はもとより監査体制のさらなる強化に乗り出す。その領域は契約、経理、売上管理、不正防止、そして保険販売など多岐に渡る。一連のガバナンス強化は社会的要請に応えるもので、その実現に向けてシンカ(江尻高宏社長、東京都千代田区)のITツール「カイクラ」が欠かせなくなっている。
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電話の見える化を可能に
カイクラは〝会話クラウド〟の略。既存の車両管理ツールや顧客管理ツールと紐づけることで、着信時に相手の情報を瞬時にパソコンブラウザに表せる。つまり、受電前に誰からのコールか事前に情報が把握できる。「電話のみえる化」を可能にする。
顧客リストには名前、車種、ナンバー、営業担当者名、車検到来日、保険満了日などの情報に加え、現在の対応状況などが確認できる。通話自動録音機能により通話内容の記録保存も可能だ。
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特に損保継続契約に関する電話でのやりとりで大きな効果
もともと同社では統合前の一部販社が通話品質、CS(顧客満足)向上を狙いにカイクラを導入。その効果の大きさから統合にあわせて拡大した経緯がある。
そして、それはCS向上だけではなく、ガバナンス強化においても大きな効果を発揮している。特に同社の管理本部事業戦略部デジタル戦略課長の三浦健一氏は通話自動録音機能に触れ、「損害保険契約に関する内容の場合、得られるメリットは大きい」と強調する。
保険募集について、同社ではお客様の意向をしっかりと把握するため、対面による説明・契約手続きを原則としているが、やむを得ない理由がある場合に電話募集となるケースがある。その際のお客様との行き違いが発生する可能性はゼロではないという。「カイクラによる連絡の証跡確認が可能になったことで、誤った手続きなどを防ぐことができるようになった」(三浦氏)。
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〝通話自動録音機能(スマホ用)〟で携帯を含む会社全体の通話内容の可視化を可能に
これまでカイクラは固定電話のみでの設定しかできなかった。しかし、新たに「通話自動録音機能(スマホ用)」を採用したことで、携帯電話の通話内容保管管理も可能になった。同社に限らず、営業担当者は顧客と携帯電話で通話する機会が多い。こうした実情を踏まえた同機能に対する評価は高い。
同社では今年4月にスマホ用の通録機能を導入。打ち合わせ内容の再確認による顧客対応品質向上を携帯電話にも拡大、保険を含めた契約内容の変更に関する連絡も固定電話に限定してガバナンスを維持してきたが、導入を境にこうした顧客の不便もなくした。
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導入メリットはガバナンス維持だけにとどまらず
同機能を採用したことで、外部すべてからの入電状況・内容を「見える化」できる体制が整った。〝どのような顧客からどのような要件で電話があったか〟。DX化して分析し始めると、「地域特性の違いや統合前の旧各販社が強みとしていたことが改めて浮かび上がってくる。好事例を横展開することにも役立てらる」(同)と手応えを示す。