【日産社内からの昇格】

社外取締役で、指名委員会の委員長を務める豊田正和社外取締役は記者会見で、CEO職を代行する山内氏が正式なCEOに就任する可能性について否定はしなかったものの、「白紙」と述べた。山内氏は西川氏と同じく購買部門が長く、サプライヤーからの信頼も厚い。ただ、年齢が63歳と、西川氏の2歳年下で「若い世代にバトンタッチしたい」という面から見ても、山内氏がリストの10人に入っているとは思えない。

日産社内からの昇格が簡単に決まらないのは幹部の人材不足がある。カルロス・ゴーン元会長の独裁的な経営手法についていけず、実力幹部が続々と日産と袂をわかってきた。代表例が現在アストン・マーチンのCEOとなっているアンディ・パーマー氏だ。日産の元副社長でゴーン後継者の有力候補の1人だったが、あっけなく他社のトップに移籍した。ルノーの元COOでゴーン元会長に次ぐナンバー2だったカルロス・タバレス氏も現在は、グループPSAのCEOで、同社の成長を主導している。

辞任した西川氏は2013年から5年間にわたって日産のナンバー2だった。西川氏の前の志賀俊之氏は2005年から8年間、ナンバー2の座にあった。ゴーン元会長がトップで、日本人の同世代2人がナンバー2という体制が長年続き、次世代の経営を任せられる幹部の育成は事実上、手付かずだった。

さらに、社内からトップ昇格に大きなハードルとなりそうなのが、ルノー側が納得するかだ。日産の役員構成は、社外取締役6人を除けば、ルノー側がジャンドミニク・スナール会長、ティエリー・ボロレCEOの2人、西川氏は社長兼CEOの辞任後も取締役に残るため、日産側は西川氏と山内氏の2人という構成になっている。仮に日産社内から社長兼CEOを抜擢する場合、日産側の取締役数がルノーを上回ることになり、取締役会のバランスが崩れることをルノー側が嫌う可能性がある。