現場で外国人の輪が広がっている

 少子高齢化に伴い自動車整備士の成り手が少なくなる中、光自動車(大矢桂介社長、千葉県多古町)は優れた外国人整備士の採用育成策の一環として「カンボジア事業」に取り組む。カンボジア労働職業訓練省の自動車整備士訓練学校「JVCテクニカルインスティチュート」と提携。国内の整備士養成校における技術教育プログラムの提供と、日本語を学べる環境づくりに乗り出した。学費の貸付制度や受け入れを希望する整備事業者がそれらを保証できる体制も整えた。将来、日本で就業を希望する学生と、人手不足の整備事業者にとってウィンウィンとなりつつある。

 同校には毎年150~200人が入学する。1年次は所定のカリキュラムを座学で学び、2年次はインターンとして学外で働きながら学ぶ。学費は300㌦に抑えており、現地では相対的に貧困層を対象とした職業訓練学校という位置付けになっているという。

 光自動車とは提携に基づき、2年次に「日本コース」を設けている。2年生になって5カ月目に入寮し、集中して日本語が学べる体制を構築した。日本語の教育は外部機関に委託し、日本語検定で基本的な日本語をある程度理解することができる「N5」レベルの習得が可能だ。

 このコースを選択するには、学費とは別に授業料として4400㌦が必要になる。基本的には学生が自己資金で賄うが、不足が生じる場合は、委託している外部機関から借りられるようにした。この貸付制度の利用には同校の卒業試験と、日本語検定のN5以上の合格が条件。ただ、受け入れを希望する整備事業者による面接を経た後、報奨金として全額保証する体制も整えた。

 10月にはこの事業が始動してから初のカンボジア人の14人が来日する。計5社が受け入れを希望しており、同社へは4人が加わる。

 もともと同社は、外国人の採用に積極的だ。8年前から雇用し始め、現在では30人が正社員として所属している。国籍はミャンマー、ベトナム、中国、フィリピン、スリランカ、ネパールと多岐にわたる。勤務体系はもちろん、住宅補助など各種制度についても日本人同様に支援している。このうち、半数が家族帯同で永住を希望している状況だ。新たに加わる外国人の人材が活躍できる素地が備わっているため、人手不足に悩む整備事業者などからの注目を集めている。

 〈大矢桂介社長コメント〉

 今回の受賞を機に、同事業を通じた人材確保にチャレンジしたいという声をいただいている。当社の外国人人材は日本人以上に愛社精神があり、責任感を持って業務に取り組んでくれている。私自身、20歳代の時に、豪州でワーキングホリデーをした経験があるが、その時に感じた差別や嫌な思いを彼らには決してさせたくないという思いでいる。

(真坂 啓吾)