日産自動車の西川廣人社長CEOなど、同社の複数の役員が株価に連動して受け取るSAR(株価連動型報酬制度)で、社内規定に違反して数千万円を不正に受領していたことが明らかになった。日産の資金を不正に流用するなど、特別背任罪などで起訴されているカルロス・ゴーン元会長の側近で、不正を追求してきた西川社長自身の不正が発覚し、経営責任を追及する声が強まるのは必至だ。

6月に発売された月刊誌・文藝春秋で、ゴーン元会長の側近だったグレッグ・ケリー元代表取締役は、西川社長らが報酬を上乗せするため、権利行使日を株価の上昇後にずらすよう指示したと指摘していた。これを受けて日産は社内調査を実施していた。

西川社長は、「複数のケースで運用の本来のルールと違う形をとっていたようだ」と述べ、不正に上乗せされた報酬を受け取っていたことを認めた。上乗せ額は数千万円にのぼると見られる。不正について西川社長は「まったく一任していたので、適切に行われていると認識していた」と述べ、不正を指示したとの指摘を否定した。不正に受領した報酬の差額は会社に全額返納するという。

ゴーン元会長の不正事件では、側近だった西川社長が長年にわたって不正を見逃していたことを批判する意見も多く、今年6月開催の定時株主総会での西川社長の取締役選任決議で賛成率は78.0%と、取締役候補者11人のうち最低だった。大手機関投資家の日本生命が西川社長の取締役選任に反対していたことも明らかになっている。今回の報酬の不正で、西川社長の経営責任を問う声はさらに強まりそうだ。