日産自動車は9月9日の取締役会で、監査委員会から元会長のカルロス・ゴーン被告らによる不正行為に関する社内調査の結果を報告した。それによると一連の不正による日産の被害額は350億円以上と推定。同社は損害賠償を含めた法的手続きに入る。

社内調査結果によるとゴーン元会長は、側近だったグレッグ・ケリー元代表取締役の協力で、2009年度から2017年度まで合計約90億7800万円を、取締役退任後に受領することとして有価証券報告書に取締役報酬として開示する義務に違反していた。株価連動型インセンティブ受領権(SAR)で確定した報酬22億7100万円についても取締役報酬として開示せず、確定していないように書類を改ざんしていた。

ゴーン元会長は2007年開催の定時株主総会で承認された、退任時に支給される役員退職慰労金打切り支給額について、本来の金額より約24億円増額するよう偽装していた。

ゴーン元会長の会社資産の私的流用では、将来性のある技術に投資する名目でオランダの子会社Zi-Aキャピタルの設立を主導し、同社の投資資金のうち約2700万米ドルを、ブラジル、レバノンのゴーン元会長個人のための住宅購入に流用、会社資金で秘密裏に購入・賃借した住宅を私的利用した。2003年から10年以上にわたって実体のないコンサルティング契約に基づいてコンサルタント報酬名目でゴーン元会長の実姉に合計75万米ドル以上を支払っていた。業務上の関係のない自身の出身国の大学に日産から200万米ドル以上寄付させた。

2008年には、ゴーン元会長が個人的に締結した為替スワップ契約で約18億5000万円の含み損を抱え、取締役会で事実と異なるを内容を説明して含み損を日産に付け替えた。2018年4月以降、三菱自動車と設立した合弁会社から、給与・契約金名目での取締役会の決議なしに合計780万ユーロを受領していた。

さらに、ゴーン元会長は、知人から私的な資金援助を受けていることを取締役会や関係部署に隠して、日産の子会社からこの知人の経営する企業に対して「CEOリザーブ」を使って特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1470万米ドルを支払った。CEOリザーブはゴーン元会長と直属の部下が承認すれば支出可能だった予備予算。

また、海外の販売代理店の関係者からゴーン元会長や関係企業に対して数千万米ドル支払われていたことを取締役会や、関係部署に隠したまま、日産の子会社から販売代理店にCEOリザーブを使って販売奨励金名目で合計3200万米ドルが支払われていた。

このほか、株価に連動して報酬を受け取れるSARに関して、2013年と2017年に、社内規定に違反して権利行使日を偽装することで報酬を合計1億4000万円上乗せしていた。

SARに関してはゴーン元会長以外にもケリー元代表取締役、西川廣人社長CEO、元取締役2人、元執行役員4人に報酬が上乗せされていた。ただ、ゴーン元会長、ケリー元代表取締役以外の役員のSARに関しては、報酬が不正な手法で増額されたことを認識しておらず、指示や依頼していないとして、これらの役員らに対して責任は追及しないとしている。日産は不正に増額された報酬の返納を求める方針で、西川社長CEOが4700万円の返納する意向を示している。

ゴーン元会長が有価証券報告書に開示せずに受領しようとしていた報酬は推定で総額200億円以上で、一部は支払い済み。役員報酬の名目以外でゴーン元会長が日産に不正に支出、または支出させようとしていた金額は少なくとも合計150億円に上るとしている。

西川社長CEOはゴーン元会長の不正で「従業員にいらぬ苦労をかけて、お客に心配をかけたことが1番大きな責任だし罪であり、悔いてほしい。そういう形での謝罪、表明は一回も聞いたことがないので、そこを強く感じてもらいたい」と述べた。