日産自動車は1月16日、相談役・顧問制度の廃止やCEOオフィスとCEOリザーブの廃止、株価連動型インセンティブ受領権を廃止など、カルロス・ゴーン元会長の不正を受けて再発防止する15項目の改善措置を示した「改善状況報告書」を東京証券取引所に提出した。

日産のゴーン元会長が有価証券報告書に役員報酬を過少記載していたことや、会社資産を私的流用していたなどとして日産は有価証券報告書を訂正した。東証は日産に対して財務諸表を正確に作成するために必要な内部統制システムが適切に運用されておらず、企業行動規範の遵守するべき事項に違反したとして改善状況報告書の提出を求めていた。

日産はゴーン元会長に人事や役員報酬の決定権などの権限が集中していたことや、取締役会の監督機能が有効に機能しなかったことなどが不正の主な原因として、再発防止に向けて2019年6月25日付けで役員報酬や取締役選任を各委員会が決める「指名委員会等設置会社」に移行したことを報告書で説明。

同社では役員の退任後、相談役や顧問に就任するケースがあるが、役割などが明確でないことなどから、1月14日の取締役会で相談役・顧問制度の廃止を決定した。同社によると顧問や相談役は主に渉外活動や社外で行われる講演会への参加を担っており、日常のオペレーションやビジネス判断には関与しておらず、経営会議にも出席しないことから、現役経営陣へ影響力を不当に行使する懸念はなく、取締役会の機能に影響を与えるものではないとしている。

報告書では、職員の報酬や人事の決定権を持っていたCEOオフィスを廃止したほか、会社資産が私的流用に使われたCEOリザーブの廃止や、ゴーン元会長に加え、西川廣人前社長らが行使日時を操作して報酬を不正に受け取っていた株価連動型インセンティブ受領権についても2019年9月9日付けで廃止したことを報告。

また、ゴーン元会長に不正な報酬が支払われていたオランダのZiAとその子会社4社については、過去の財務諸表を作成するとともに、監査を進めており、資産処理などを完了した後、解散する予定。解散するまでの間、過去の財務諸表の妥当性の確認と今年度の財務諸表の作成が完了次第、日産の連結財務諸表にZiAとなど5社の業績を取り込む予定。

一方、日産とルノーの合弁会社RNBVを舞台にした不正の調査結果を明らかにした。調査はルノーと日産が共同で実施した。RNBVは日産とルノーの折半出資だが、連結対象外だったこともあってガバナンスが形骸化していた。RNBVはベルサイユ宮殿でのパーティー費用、リオのカーニバルやカンヌ映画祭における ゲストの招待費用、マルモッタン美術館での夕食、パリのカルティエでの贈答品の購入、 日産のビジネスがほとんどないレバノンの法律事務所の弁護士費用など、ゴーン氏の個人的な費用、RNBVの業務目的と無関係な費用として少なくとも 390万ユーロ(約4億8000万円)の支出があった。

2009年から2018年にかけてRNBVは、ゴーン氏個人の名義で学校などに約237万ユーロ(約2億9200億円)寄付されていたほか、業務とは無関係にコーポレートジェットを利用していた。個人的な渡航費用は市場価値換算で310万ユーロ(約3億8100万円)で、RNBVが被ったコストは少なくとも510万ユーロ(約6億2700万円)にのぼる。

さらに、ゴーン氏の側近で逮捕・起訴されたグレッグ・ケリー元代表取締役が業務実態がないにも関わらず2016年にRNBV からコンサルタントフィーとして20万米ドル(約2200万円)を受領した。このほか、RNBVは2013 年から 2017 年にかけて、ゴーン氏に近いルノー上級役員だった取締役1人に60万ユーロ(約7380万円)の役員報酬を支払っていた。この取締役以外にRNBVの役員で報酬を受けた役員はおらず、報酬の合理性について納得できる説明はなかったとしている。