bZ4X(現行モデル、写真右)

 トヨタ自動車は、今年後半にも電気自動車(EV)「bZ4X」を国内で50万円以上、値下げする方針だ。補助金を差し引き、実質400万円前後で購入できるようにする。併せて約700㌔㍍以上の航続距離性能を持たせた新グレードを追加する。現在は月販100台未満にとどまっているが、商品改良を機に月販1500台を目指す。トヨタがてこ入れに乗り出すことで、日本のEV比率が上向く可能性もある。

 bZ4Xは2022年5月にサブスクリプション(定額利用)限定でまず発売し、翌年暮れから一般的な販売も始めた。エントリー価格(消費税込み)はFF(前輪駆動)の「G」で550万円。国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の90万円を差し引くと、実質的に460万円になる。東京都(45万円)など自治体独自の補助金もある。

 今年後半に予定する商品改良で、エントリー価格をさらに引き下げる。具体的な価格は検討中だが、CEV補助金を差し引いた実質負担を400万円前後にする方向で検討している。電池の性能が高まり、約540㌔㍍(WLTCモード)の航続距離を保ったまま電池容量を2割減らすめどがついた。この原価低減分を値下げに充てる。

 一方、電池性能の向上を航続距離側に振った新グレードも追加する。74.7㌔㍗時の電池を搭載し、1回の充電で700㌔㍍以上(同)の航続距離を持つモデルだ。

 トヨタがEVの価格を大幅に下げる背景にはまず、国内の燃費基準がある。30年度には16年度実績に比べて企業別平均燃費(CAFE)を3割以上、改善する必要がある。このため、今後はEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の販売に力を入れていく。

 中国製EVに対する警戒感もある。BYDは23年に日本市場に参入。24年度はトヨタ(約1500台)を上回る約2400台のEVを販売した。参入当初の計画には届いていないとみられるが、事業展開が早く、PHVや軽EVを投入する方針も明らかにしている。浙江吉利汽車(ジーリー)グループの高級ブランド、ZEEKR(ジーカー)も年後半に日本へ進出する。

 ハイブリッド車(HV)大国の日本は電動車販売比率(乗用車、24年度)こそ5割強を誇るが、EV比率は1.5%(同)にとどまり、2割前後の欧米に水を開けられている。トヨタがてこ入れに乗り出すことで、日本のEV市場が拡大する可能性もある。