金利が従来以上にクルマ選びのポイントに(イメージ)

2024年春に政府がマイナス金利政策を解除してから約1年。足元では米国の関税リスクを受けて、日本銀行による政策金利の早期追加利上げ観測が後退しているとはいえ、1年で長期金利や短期プライムレートは上昇。その余波で自動車ローンの金利も上がりつつある。車両価格の上昇などで、通常ローンや残価設定型クレッジットの利用率が高まってきたこれまでのトレンドも、今後は変化する可能性もありそうだ。

政策金利上昇の影響は、借入額の大きい住宅ローンに注目が集まりがちだが、自動車ローンにも間接的に影響を与える。自動車の場合、多くは固定金利だが、変動金利の商品を展開する銀行系では短期プライムレートの引き上げと合わせてマイカーローンの金利が上昇。預金を抱えないメーカー系の販売金融会社や信販会社が扱う固定型の金利も、金融機関からの資金調達コストの増加に伴い、24年半ばから本格的に上昇し始めた。

例えば全国の販売店で金利を統一させているホンダは、25年4月に残価設定型クレジットや通常ローンの金利を改定。それぞれ従来よりも0.6ポイント高い4.9%、5.5%に引き上げた。スズキも以前は2%台だった登録車の残価設定型ローンの金利を軽自動車と同じ3.9%に改定。トヨタ自動車の場合、販売会社が金利を決めるため利率はまちまちだが、7%程度にまで上げた販社もあるようだ。

信販会社では、多くの外国車インポーターと提携するジャックスが「24年度に資金調達コストの上昇を貸し出し金利に反映させた」(同社担当者)ほか、中古車販売店に強いオリエントコーポレーションも「資金調達コストをいかに反映させるかが課題」(同社幹部)と加盟店との交渉を進める考えだ。

割賦購入の比率は過去10年の間に右肩上がりで増加してきた。日本自動車工業会(片山正則会長)が2年に一度まとめている市場調査によると、13年に75%だった現金購入の比率(新車のみ)は調査ごとに低下し、23年には58%となった。残りは通常ローンや残価設定型クレジット、リースなどの金融商品による購入で、特に若年層の利用率が高い。

規制対応や原材料価格の高騰による車両価格の上昇で割賦の需要が増えている中で、各社は低金利施策やサブスクリプションなどの新商品投入で利用率を高めてきた。ただ、今後は金利の上昇を契機に現金購入に回帰する動きが広がるかもしれない。

もっとも、ホンダ系販売会社のトップは「金利があまりに高くなると、若年層へのアプローチが難しくなる」と懸念する。規制対応や原材料価格の高騰による車両価格の上昇で、若年層など所得水準が低い層は、割賦による購入しか選択肢がないケースもある。個人リースを手掛けるジョイカルジャパン(早川由紀夫社長、東京都千代田区)も「販売に直結するため、簡単にリース料に反映できない」(同社幹部)と悩まし気だ。

国内市場の縮小で競争環境が厳しくなる中、販売金融会社や車両販売店の「金利のある世界」の戦い方も各陣営で分かれそう。車両を購入するユーザー側も、改めてクルマの買い時や買い方、店選びを慎重に判断する動きが出てきそうだ。

(水鳥 友哉)