村田製作所の「ふしぎな石ころ」
京セラが開発した端末
住友理工は、住友グループの「住友館」で技術を紹介するパネルを展示

「大阪・関西万博」では、自動車サプライヤーやエレクトロニクス各社も参画している。万博という国際的な舞台で、独自技術をアピールすることで、新たなビジネスチャンスを切り開く狙いだ。

京セラは、石黒浩テーマ事業プロデューサーが担当するシグネチャーパビリオン「いのちの未来」に、高速通信技術や屋内測位技術、ウェアラブルデバイスによる人間の機能拡張などを提供している。

パビリオンで来場者が使うスマホを通じて位置をトラッキングできるような屋内測位システムを搭載した次世代通信インフラを開発。国内初のローカル5G無線電波のみを利用した測位で、展示物とのコンテンツ連動を実現した。展覧会などでおなじみのイヤホンガイドでは通常、コンテンツを聞きたい展示物の番号を、端末にその都度入力しないといけないが、今回の技術ではそうした操作が不要で、展示物の前に立てば自動的にコンテンツにアクセスできる。工場の生産現場といった場面などでの応用が期待できる。また、端末は国内で手掛けており、企画から製造まで国内で一気通貫できる同社ならではの強みを生かした。

同じく関西勢で、さまざまな展示を手掛ける村田製作所の目玉の一つが「ふしぎな石ころ」だ。特殊な振動により、脳にあたかも引っ張られたかのような錯覚を起こす3Dハプティクス(触覚)技術をはじめ、位置を検知するアンテナや、アプリと接続して情報をやりとりするRFIDなどの技術を搭載している。アプリに入力された情報をもとに、個人の嗜好に応じたお薦めスポットへこの石ころ(echorb)が誘っていく。

バッテリーも内製している。空洞共振方式充電により、保管庫を兼ねた充電装置に置くだけで充電ができるようになっている。バイタルセンサーも活用するなど、将来的には視覚障がい者の誘導などに活用することも想定する。

「自分から来てくれるゴミ箱」で参加しているのは三菱電機。「自律走行ごみ箱ロボット」を、大屋根リングの上に提供している。「固定したゴミ箱の周囲がゴミであふれ、汚くなってしまうことがある」といった課題を聞いたのが開発のきっかけ。高精度の三次元地図や測位技術、各種センサー技術を組み合わせ、シームレスな自律走行を可能にした。「会場の清潔性、快適性向上に貢献したい」といい、将来はこの技術を使った製品も世の中に出てきそうだ。

住友グループによる「住友館」では、住友理工が薄膜高断熱材「ファインシュライト」やバッテリー冷却プレート「クールフィットプレート」などのパネルを展示した。さらに、これらの技術と生成AI(人工知能)を掛け合わせ、未来社会へのアイデアを創出する「ミライのタネ」も紹介。住友ベークライトも、独自の高分子化合物(ポリマー)技術を用いた光導波路などを披露している。

戸田工業とエア・ウォーターは、万博会場内の熱電供給システムの燃焼排ガスから二酸化炭素(CO2)を回収、活用する取り組みを実施している。会場内で燃料用メタンの合成や冷却用ドライアイスとしての活用を実証し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に貢献する。

2社および埼玉大学が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助を受けて実施する開発・実証事業の一環。固体状の「ナトリウムフェライト系酸化物」をCO2回収材に用い、CO2発生量が少なく濃度が低い中小規模の回収環境でも効率的に回収可能とした。戸田工業は回収性能の向上や製造方法の確立を研究し、エア・ウォーターが分離回収プロセスを開発。実証機の運用は両者で手掛ける。

サプライヤー以外にも、物流向けシール・ラベルなどを手掛けるOSPホールディングス(松口正社長、大阪市天王寺区)は、バーコード用シール・ラベルなどを提供し、運営を支援している。