独自のラッピングを施した合成燃料万博シャトルバス
合成燃料でも通常と乗り心地は変わらない

 大阪・関西万博が13日に開幕する。会場へのアクセスは、自家用車および二輪車の乗り入れが不可となり、障害者を除く全来場者が、いずれかの公共交通機関を利用して夢洲(大阪市此花区)の万博会場へ向かうことになる。そうした中、開催期間中のJR大阪駅と会場間を結ぶ交通インフラに、合成燃料を使用して走るシャトルバスが投入された。水素と二酸化炭素(CO2)のみを原料とする合成燃料を営業車両に使用するのは全国で初。環境に優しい合成燃料が普及する未来を体験できる機会となる。

 大阪・関西万博における合成燃料シャトルバス走行は、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の推進に共鳴した日野自動車とENEOS(エネオス)、西日本ジェイアールバス(北野眞社長、大阪市阿倍野区)の3社が連携し実現した。西日本JRバスが持つ日野「セレガ」2台を使い、大阪駅前の「うめきたグリーンプレイスバス駐車場」(大阪市北区)を発着するシャトルバス全19便のうち、半数(1日10便)を合成燃料バスとして走らせる。

 今回使用する合成燃料は、グリーン水素と産業活動から排出されたCO2のみを原料とし、エネオスが中央技術研究所(横浜市中区)内の実証プラントで製造した液体燃料。合成燃料の原料となるグリーン水素は、風力や水力など再生可能エネルギーを利用して製造するもの。水素自体の生産過程においてもCO2を排出しないため、グリーントランスフォーメーション(GX)化の推進において、注目度が高まっている。

 エネオスの山口敦治社長は「万博は、脱炭素に向けた日本の姿勢を世界にアピールする絶好の機会。燃料分野におけるカーボンニュートラルを身近に実感してほしい」と話す。

 合成燃料は、ガソリンから重油まで多種の燃料を製造することができ、貯蔵や輸送が容易な上、エネルギー密度にも優れている。既存のインフラ設備やモビリティを活用できるため、今回のようにバスの燃料として利用する際も、合成燃料専用の車両を製造する必要がない。最初は軽油に5%混ぜて走り、段階的に混合比を上げて最終的には合成燃料のみでの運行を目指す。

 日野は、万博期間中も合成燃料と車両やエンジンとの適合性を確認するなどで運行をサポートしていく。日野の脇村誠最高技術責任者(CTO)は「持続的に使用できる燃料のプロジェクトに参画でき、うれしく思う。実証を通じ安全を確認しており、安心して利用してほしい」と述べた。

 大阪・関西万博が掲げる「EXPO2025グリーンビジョン」の達成に向けた未来体験は、大阪の街中から始まる。

 いよいよ開幕する大阪・関西万博。自動車業界からも多数の企業が参画し、未来のモビリティや次世代技術の体験機会を提供する。業界に与える影響も含め、さまざまなテーマで万博の「今」を伝える。(月曜日に掲載)