金融庁は8月6日、中古車販売大手ネクステージに対し、同日付で保険業法に基づく行政処分(業務改善命令)を出したと発表した。経営責任の明確化などを含めて、9月8日までに業務改善計画の提出を求めている。自動車保険をめぐる一連の不祥事で、自動車販売業者に行政処分が出されたのは旧ビッグモーター(代理店登録取消)、トヨタモビリティ東京(佐藤康彦社長、東京都港区)、グッドスピード(加藤聡社長、名古屋市東区)に続いて4社目となる。

ネクステージは複数の損害保険会社と契約し、保険代理店として自動車損害賠償責任(自賠責)保険や任意保険を販売している。

金融庁によると、同社は2024年6月時点で、顧客対応が必要となる可能性がある不正請求疑義事案を少なくとも47件把握していたにも関わらず、事実確認のための調査指示や顧客対応を行っていなかった。また、同社の自主調査は不正の蓋然性が高いと考えられる案件を調査対象外としていた。板金修理売り上げの9割以上が外注先工場での修理案件だが、資料が揃っていないなどの案件を外していた。

さらに、事業の急拡大による従業員の増加に加え、従業員による顧客のクレジットカードの窃盗などの犯罪行為やコンプライアンス違反行為が継続的に発生しており、その対応のために保険事業に十分な人員を配分できていない実態にある、という。

同社では23年8月、自主調査で保険金の不正請求事案は確認されなかったと公表した。しかし、その後も不正があったとの報道が続いた。同年9月には自動車保険契約のねつ造など不適切事案があったと公表した。当時の社長が辞任し、創業者の広田靖治会長が社長を兼務することになった。金融庁が同社に立ち入り検査に入ったことが24年12月に表面化していた。

また、金融庁は同日、訪問型の保険代理店最大手のFPパートナー(東京都文京区)にも保険業法に基づく行政処分(業務改善命令)を出した。顧客の意向に合致しない生命保険商品を勧め、苦情が出ていた。保険会社からの便宜供与の実績に重点を置いて推奨商品を選んでいた。

自動車保険では、損害保険会社の便宜供与で自動車販売会社が推奨商品を決めていたことが問題視されたが、生保でも同様の構図になっていたことが判明した。