JMS会場ではエスピノーサ社長が自ら魅力を語った

日産自動車は10月29日、大型SUV「パトロール」を2027年度前半に国内に投入すると発表した。「ジャパンモビリティショー(JMS)2025」でイヴァン・エスピノーサ社長が発表した。国内での反響の高さと、現場からの“直訴”が、市場投入のきっかけになったという。価格や仕様は検討を続ける。

パトロールは全長約5.1m、全幅約2mの大型車で、特に中東市場での販売が好調だ。ラダーフレームの堅牢性と砂漠を走れる走破性に加え、電子制御サスペンションや革張りの内外装、立体音響システムなどで高級感を演出。アラブ首長国連邦(UAE)では王族が所有していることでも知られ、ブランド力を高めているという。

排出ガスや騒音など日本の規制への対応については、技術的なめどが立っているという。右ハンドル仕様の開発が進んでおり、26年後半以降には豪州市場への投入も予定している。

国内投入は、開発や商品企画担当者からの提案がきっかけになった。昨年9月のUAEでの発表会や海外での試乗会を一部の日本人ジャーナリストが動画共有サイトで伝えると、日本の視聴者から投入を望む声が多数上がったという。反響を知った担当者が部門の垣根を超えて団結し、経営陣に急いで投入を打診。晴れて実現することになった。

開発担当者は「技術面でも日本向けに出しても役割を果たせる自信を持っていた」と振り返る。「国内では大型のクルマと技術をテコに、平均単価の改善を図る」と就任時から話していたエスピノーサ社長の考えとも一致した。

価格帯や仕様は検討中だ。中東では4グレード展開で、エンジンも排気量3.5リットルのツインターボと、3.8リットル自然吸気の2つのV型6気筒エンジンを搭載する。JMSでの反響も参考に、今後詰めていく。

個人所有のほか、社用車などのショーファーカー需要も意識している。「決して多くの台数を販売するクルマではないが、刺さる人には刺さる」(開発担当者)特別感を強みとする考えだ。

販売促進策も今後検討していく。ボンネット下を透過する機能など、車体の大きさをカバーする運転支援技術を多数搭載しており、購入希望者が魅力を体感できる場も設けていきたい考えだ。

エスピノーサ社長は、JMS会場でパトロールの魅力を報道陣に自ら説明。「街乗りでは洗練された内装とスムーズな走りで、砂丘でも想像できないような楽しい走りができる。二面性があるクルマだ。多くのお客さんが買ってくれると信じている」と語った。

中東の“成功者の象徴”が国内市場でどう受け入れられ、国内市場での挽回に寄与できるか、注目される。