善家自動車(愛媛県鬼北町)は2022年5月にボッシュカーサービス(BCS)に加入した。それ以来、「加入するだけでは何にもならない」という〝先輩〟の言葉を受け、善家和久社長をはじめ同社社員がBCSの講習会などに積極的に参加している。それが善家社長にとっても大きな刺激になっている。一方で、市場が縮小傾向にある地域で生き残るという大きな課題とも向き合っている。
整備に関することはメンバー同士で助け合う
善家自動車がある愛媛県鬼北町は、県庁所在地の松山市から約90キロメートル離れた県南部に位置する。対面による最新の技術を学ぶ機会は限られており、善家社長も「1人でインターネットを活用しても(情報収集には)限界がある」と感じていた。
知人の紹介でBCSに加入後、ある加盟店から「加入するだけでは、何にもならない」と言われたことで、年1回開催される全国会議やブロックの会合、各種講習会にも愛媛県から参加している。特に対面で行われる講習会などには「すべて行く」(善家社長)というほどだ。社員も講習会へ積極的に参加させ、加盟店の社員同士のネットワークづくりを後押しする。
ボッシュの講習会では車に関する最新の動向や技術が学べることが強みの一つだ。善家社長は、車の電子制御ユニット(ECU)に搭載されるセキュリティゲートウェイ(SGW)のことはBCSで学んだと振り返る。また、24年の全国大会で聞いた電気自動車(EV)の動向などの解説は、サプライヤーだからこそ聞ける情報もあり、「BCSに入らなければ聞けなかった」(同)と話す。
善家社長がBCSに加入して強く感じるのが「メンバー同士で助け合うところ」だという。例えば補修部品の入手方法を相談すれば、その場でアドバイスがもらえる。作業手順で気になることを尋ねれば、それに対する答えがすぐ返ってくる。酒の席でも自動車整備の話題が多く、普段の仕事で分からないことが発生しても「電話1本で聞ける仲間ができた」(善家社長)。これがBCSに加入してからの大きな財産であり、今後も加盟店と「一緒に楽しく学んでいきたい」としている。
また、周りの加盟店は自動車整備の情報など、何らかの情報を貪欲に求めているという。最新の動向などへの意識も高く、同じ講習会に参加するほかの加盟店からさまざまな刺激を受けるという。
軽から輸入車まで受け入れて地域に選ばれる工場を目指す
整備などの入庫は、会社がある愛媛県鬼北町のほか同宇和島市、同八幡浜市、高知県西南部の四万十市など広範囲だ。善家社長は「県外からも来ていただけるのはBCSの看板のおかげ」と話す。現在は新規の入庫が月平均20件あり、その半分ほどが輸入車だ。ディーラーの店舗が遠いため、「善家自動車で修理できないか」と持ち込まれるケースが珍しくない。それでも、同社に入庫する車両の内訳は国産車が約60%、輸入車が約40%。輸入車に特化せず、軽自動車から輸入車まで幅広く受け入れ、地域の自動車ユーザーから選ばれる整備工場を目指している。
整備に当たって善家社長が重視するのは、写真と説明、顧客とのコミュニケーションだ。部品交換を行ったら、新品と使用済みの両方を撮影し、車の所有者が交換したことが分かるようにする。同社にとっても適切な作業を行ったエビデンスになっている。
また、善家社長が車をチェックして感じたことは、必ず顧客に伝える。例えばショックアブソーバーの“抜け”が見られたら部品交換を提案する。費用はかかるものの、安全かつ快適に乗ってもらうためにはちゅうちょしない。古い車だからといって提案を省略すると、納車後のトラブルにつながるからだ。
特定のブランドだけ必要でもBCS加入はプラスになる
善家自動車がBCSに加入して3年半が過ぎた。加入した当時、善家社長は「BCSに入れば、何かがある」という期待があったという。スキルアップの場や加盟店同士が親交を深める機会を最大限に活用してきたことで、「BCSのアピールポイントは人」であることを実感している。また、整備に明るい人が多いことから、善家社長は「特定の(輸入車)ブランドだけを知りたい、という人でも十分プラスになる」と話す。
現在は善家社長や社員が講習会などで出掛けても、残った人に仕事を任せられるなど、企業としての体制が整ってきた。ボッシュは店舗の監査を定期的に実施し、加盟店の顧客満足(CS)やサービス品質の向上をサポートする。同社も、加入後は整備工場や待合スペースなどを清潔に保つ意識が高まったという。
地域の市場は縮小傾向にあり、善家社長には「何とか生き残らないといけない」と危機感は強い。そのためにも、他社ができないことを探して「地元で完結できることが一番いい」と話す。BCSを通じて最適解を模索している。
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ボッシュのワークショップネットワークとは
ボッシュが展開する「ワークショップネットワーク」は、受けられるサービスやサポートによって大きく三つに分けられる。
「ボッシュモビリティパートナー(BMP)」は、ネットワークの入門編という位置付けだ。ボッシュ製品の情報やオンラインセミナーなどを行うポータルサイトにアクセスできるほか、ボッシュの部品販売に向けたサポートが受けられる。
「ボッシュダイアグノスティックオーソライズドショップ(BDA)」は、ボッシュのスキャンツール「KTS」を使用する故障診断や車両整備に特化したワークショップ。BMPのサポートに加えてボッシュホームページに店舗の情報を掲載できる。
ネットワークの最上位に位置するのが、「ボッシュカーサービス(BCS)」だ。世界約150カ国に1万件以上の整備事業者で構成され、高い技術力を養成、維持するためのトレーニングや整備機器に加え、定期的な監査と支援により高品質なサービスを継続して提供できるようにする。









