官民ファンドのINCJ(勝又幹英社長、東京都港区、旧産業革新機構)は14日、ジャパンディスプレイ(JDI)の全株式を売却したと発表した。累計投資額に対する回収率は66%(3073億円)にとどまり、1547億円の損失が確定した。
INCJの志賀俊之会長は「13年間リスクを取って投資してきた結果とは言え、会長として申し訳なく思っている」とコメントした。
投資先のJDIは、ソニーや東芝、日立製作所のディスプレー部門などを統合して2012年4月に誕生し、INCJも当初から投資を実施。14年にJDIは上場を果たすが、その後の有機ELへの対応の遅れや中国や韓国、台湾企業の攻勢などにより業績が停滞。INCJは社外取締役をJDIに派遣して再建に取り組んできた。
JDIも20年に独立系投資顧問のいちごアセットグループと資本提携し財務体質の改善に取り組んでいるが、経営は依然として厳しい。今年に入り、茂原工場(千葉県茂原市)の生産を26年に終了する予定と公表したほか、役員報酬や従業員賞与の減額、新卒採用の見送りなどを相次いで発表した。
同社の25年3月期業績予想も、民生・車載用液晶ディスプレーの需要減や鳥取工場(鳥取市)の生産終了に伴う減損損失などで当期純損益は11期連続の赤字の見通しだ。