自動車の変化に伴い、タイヤも進化を続けている。タイヤメーカー各社は電気自動車(EV)用タイヤの発売を本格化させているほか、タイヤを路面状態などを把握するセンサーとして使い、得たデータを活用する動きも進む。さらに走行環境に合わせて性能が変化する次世代技術の開発も進んでいる。

 国内タイヤメーカーは欧州や北米、中国市場を中心に、「EV用」市販タイヤを市場投入している。大トルクや重い車重を受け止めながらも転がり抵抗を下げ、航続距離の伸長に寄与するものだ。相反性能の両立とさらなる性能向上を目指し、各社はナノレベルのゴム分子制御技術などをフル活用して取り組んでいる。乗用車用だけでなく、トーヨータイヤは北米で人気の高いライトトラック用の大径EVタイヤを開発している。

 タイヤから路面状態を推定し、メンテナンスなどに役立てる取り組みも進めている。住友ゴム工業は中国のバス運行事業者向けに「路面滑りやすさマップ」などを提供する実証実験に現地で取り組んだ。車輪脱落予兆検知機能などは自動車メーカーへの採用が決まった。

 さらに各社はタイヤの常識を覆す研究開発に取り組む。住友ゴムは路面上の水分や温度で接地面の性能が変化する「アクティブトレッド」技術を開発中で、次世代全天候タイヤから順次搭載していく。横浜ゴムも走行環境に合わせてタイヤの硬さが変わるコンセプトタイヤを「ジャパンモビリティショー2023」に出展した。

 持続可能性も業界の大きな課題だ。ブリヂストンは軽量で剛性の高い設計基盤技術で原材料の使用量を減らすとともに、廃タイヤを新品タイヤの原料として再利用する取り組みの実現を目指す。各社は2050年の「100%サステイナブルタイヤ」の実現を目標としており、再生品や植物由来原材料の活用に向けた開発が加速する。

 モビリティの安全安心を支えつつ、タイヤをより持続可能にするため、各社は水面下で開発に汗を流している。