自動運転の領域では、実用化に向けた実証が活発になってきた。昨年は、ホンダとゼネラル・モーターズ(GM)が2026年に都内で「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)の自動運転タクシーサービスを開始すると発表したほか、ソフトバンクの子会社も23年度中に全国6カ所の公道でレベル4の実証を始める方針だ。

 また、NTTが米スタートアップのメイ・モビリティに出資し、日本で同社の自動運転システムを販売する方針も示した。完成車メーカー同士がタッグを組み、大手通信会社が続々と参入するなど、競争が激化しつつある。都内でのラストワンマイル用途や過疎化が進む地方での移動手段として活用が期待されており、技術開発もさらに活発になりそうだ。

 政府は自動運転サービスを25年度に50カ所、27年に100カ所で行う目標を掲げている。23年4月には道路運送車両法や道路交通法が改正され、遠隔監視などを前提にレベル4自動運転車の公道走行が解禁された。日本で初めてレベル4車両を導入した福井県永平寺町では、地域住民の移動手段として実用化が進む。

 サプライヤー各社もレベル4時代を見据え、開発を急ぐ。パナソニックインダストリーは、車両位置を高精度に測位するジャイロセンサーを開発中だ。独自技術で耐振動性などを高め、より高い精度で自車位置を推定する。汎用品と比べて精度は約20倍になる見込みで、27年度の実用化を目指す。

 ボッシュは20年代半ばにステア・バイ・ワイヤシステムの量産化を目指している。ステア・バイ・ワイヤは、ステアリングホイールからの指示を電気信号で伝達してステアリングホイールの位置を調整できるため、高度自動運転車の車内空間の自由度が高まることが見込まれる。ボッシュはLiDAR(ライダー、レーザースキャナー)などのセンサー類も手がけており、外部センサーと連携することでより高度な自動運転技術の実装も可能となる。

 ただ、レベル4以上の自動運転車が本格的に普及し始めるのは30年代以降になる。今年は将来に向けた種まきを進める一年になりそうだ。