戦略物資としての車載電池の存在感が一層高まっている。パナソニックエナジーがマツダ、AESCがホンダなどと電池供給に向けた契約を進めており、この動きはさらに加速しそうだ。リチウムやニッケルなど産出国が特定の国に偏在するレアメタルはサプライチェーン(供給網)リスクも抱える。電池は電気自動車(EV)のコア部品であり、EV普及の要にもなる。スピード感を持った対応が求められる。

 2023年は電池の開発や生産をめぐる協業が相次いだ。AESCは今春に稼働を予定する茨城工場(茨城県茨城町)で、ホンダやマツダに供給するリチウムイオン電池(LIB)を生産する方針を示した。主力とする日産自動車向けを含め、将来的には20㌐㍗時まで生産増強する考えだ。

 パナソニックエナジーは昨年、マツダと円筒型電池の供給に向けた議論を開始。20年代後半に発売するマツダの次世代EV用に採用する方針だ。

 利益性や効率性などを踏まえると、車載用電池では地産地消が加速することが想定される。EVの普及で今後、電池の獲得競争が激化することが予想されるため、グローバルで生産拠点を持つ日本の自動車メーカーは、地域ごとに調達先を確保する必要があり、足元では将来を見据えた仲間づくりが始まっている。

 電池の供給網を構築する上では中国包囲網が敷かれ始めている。22年の電池世界生産の6割以上が比亜迪(BYD)などの中国企業が占めた。リチウムや黒鉛などの電池材料生産でも中国は強みを持つ。台頭する中国を警戒し、米国は「インフレ抑制法(IRA)」で中国EVの排除に乗り出したほか、欧州連合(EU)も中国EVが健全な市場を阻害する可能性があると調査に入った。「供給網全体で中国由来の電池はリスクになる可能性が高い」(部品メーカー関係者)ため、材料から生産まで中国に依存しない体制づくりが急務となる。

 また、昨年はトヨタ自動車が出光興産と全固体電池の量産に向けた協業を発表。全固体電池は日産やホンダが今年、生産ラインの設置を計画しており、実用化に向けた進展が期待できる一年になりそうだ。