自動車産業がカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)達成に向けた生産工程の見直しを加速している。自動車は部品や車体の製造工程で二酸化炭素(CO2)を大量に排出し、電気自動車(EV)では電池製造時の排出分も加わる。各社とも将来を見据え、再生可能エネルギーやリサイクル部材の活用などを進め、早期に生産工程の脱炭素化を図る考えだ。
国内におけるCO2排出量のうち、産業部門が約35%、運輸部門が約17%を占める。自動車産業には両部門にわたって排出削減が求められる。
ヨロズが今年、稼働を見込む新工場(岐阜県輪之内市)は「カーボンニュートラルのモデル工場になる」と平中勉社長は話す。塗装工程で使用するエネルギーをLNG(液化天然ガス)ではなくグリーン電力に切り替え、脱炭素化を実現。国内工場ではカーボンニュートラル80%を達成しており、グローバルでも着々と比率が上がってきているという。
アイシンは西尾工場(愛知県西尾市)でCO2を分離・回収し活用する「資源循環システム」の評価を始めた。ダイカスト工場のアルミ溶解炉から排出された排ガスからCO2を回収し、溶解炉の燃料として再利用する。自社工場内で回収から利用までのスキーム構築を進める考えだ。
事業化する動きも出てきた。日本ガイシはCO2を回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」向け角型ハニカム基材を製造し、30年頃の実用化を目指している。内燃機関車向けの触媒技術を応用する。東レはEVや半導体の部品に用いるガラス繊維強化PPS樹脂(PPS―GFRP)において、リサイクル後も初期性能を維持できる新技術を確立、26年の実用化を目指す。同材料を50%交えた場合、バージン材(新品)と同等の強度でCO2を40%以上削減できるという。
また、ENEOS(エネオス)、出光興産などは液体燃料や内燃機関に関する技術や知見を持ち寄り、合成燃料の実用化で協力していくことも決めた。製造に大気中のCO2を用いる合成燃料は次世代エネルギーとして期待されており、内燃機関車の生き残り策にもなる。