コックピット周りを手がける各メーカーは、乗用車向けにとどまらず商用車向けにも新たな車室空間を提案する。自動運転車への採用を想定した新たな車室空間や、商用車ではドライバーの安全運転や配送業務を支援するような機能を加えて価値を創出する。

 各社は自動運転車の普及をにらみ、居住空間に近い車室空間をアピールする。例えばパナソニックグループは2035年の暮らしを想定した電動モビリティのコンセプト「モバイルリビングルーム」を提案する。35年ごろには自動車専用道路などでは自動運転「レベル3」(条件付き自動運転)程度の自動運転が普及していると想定し、会話ができるアシスタントのAI(人工知能)機能やガラスの透過度を任意に変えられる仕様などを取り入れた。

 一方、商用車では安全運転や配送効率化などを支援するコックピットを矢崎総業(矢﨑陸社長、東京都港区)が提案する。同社が手がけた「次世代商用車コックピット」のコンセプトは車両情報や矢印による進路案内などを大型透明ディスプレーで表示するほか、配送ルートや荷室の状況は3D(3次元)で立体表示するなど、ディスプレーでドライバーに必要な情報を迅速に提供する。

 トヨタ紡織は商用バスに新たな付加価値を加える。同社と愛知県が中部国際空港(愛知県常滑市)の周辺で走らせたバス「MOOX―RIDE(ムークスライド)」は乗員へ移動中にデジタルコンテンツを提供する。走る場所に合わせた観光情報や広告を再生し、利用者の回遊機会増加に寄与すると見込む。日野自動車の「ポンチョ」を架装し、窓には透過ディスプレーを備え、プロジェクターによる天井への映像投影や3D音響スピーカー、座席振動なども取り入れた。

 より安全で快適な移動空間の提供を大前提に、各社はさらにユーザーの利用目的や趣向などにあった車室空間を従来の発想にとらわれない形で開発を進めているようだ。