軽EV元年となるか

 国内メーカーも、EVのラインアップ拡大が課題となる中で日本市場を狙い打つEVを本格的に投入する。日産と三菱自は新型軽EVを共同開発し、22年前半にも発売する計画。軽自動車の長所である「小型」「低廉」という特徴は、航続距離とのトレードオフになってしまうのが足元の実情だが、こうした点をどれだけユーザーに理解してもらい、EVならではの乗り方を訴求できるかも軽EVの今後を占いそうだ。

 21年9月には小泉進次郎環境相(当時)が日刊自動車新聞のインタビューに「22年は『軽EV元年』として、環境省としても力強い後押しができると思う」と表明。補助金の拡充を含め、ユーザーの負担と不安を払拭するために官民が歩調を揃える動きは、価格や使い勝手に関するユーザーの評価がシビアな軽EVの普及においてこそ、大きなインパクトを与えそうだ。

存在感大きい内燃機関車

 新型EVが続々と登場する一方、内燃機関車も存在感を示す。ミドルサイズミニバンを代表するトヨタ「ノア」「ヴォクシー」とホンダ「ステップワゴン」は、揃って22年内の全面改良が予告された。先進運転支援システム(ADAS)の機能向上や最新のハイブリッドシステムの搭載など、各メーカーがこれまでに培った成熟技術が凝縮され、既存のユーザーが違和感なくその恩恵に与れる点は、内燃機関車ならではの魅力と言える。現行型の投入から年数が経過する中でも販売台数ランキングで上位に食い込むミニバン商品群は、22年の市場の起爆剤となってコロナ禍や新車供給遅れにあえぐ販売現場の救世主となりそうだ。

 刺激的なエンジンサウンドを奏でるスポーツカーも健在だ。ホンダは21年に全面改良して投入した「シビック」に、スポーツモデルの「タイプR」を追加して22年内に投入する計画。日産も大幅に刷新した「フェアレディZ」でファンの期待に応える。世界的なEVシフトの潮流の中で市販スポーツカーの先行きも危ぶまれるが、メーカーがこうした車種の開発を続けることに、単なる移動手段としてだけではないクルマの価値と作り手の気概が表れている。

 「EV元年」というフレーズが過去のものとなり、官民もEVシフトへ向けて躊躇のない決断を下した21年。トヨタは30年までに30車種のEVを展開し、世界でEV販売350万台を達成するとの目標を掲げて業界を驚かせた。一方で国内メーカー各社のトップが強調するように、次世代車の地理的環境やインフラの整備状況、雇用を含めた産業構造など、さまざまな要因が絡み合い先を見通すことが難しい。22年に登場する数々の新型車の成否は、自動車業界の未来を示す羅針盤となるかもしれない。