サブスクやオンライン販売は新車市場をどのように変えるのだろうか
ベンチャー企業など異業種も自動車市場への参入を狙う
給油所網を活用したEVビジネスが広がりそうだ

 2022年の新車販売市場は、新たな「売り方」を模索する動きが本格化しそうだ。自動車メーカーを中心にサブスクリプション(定額利用)サービスを拡充しているほか、インターネットで車選びから契約までを完結するオンライン販売の可能性を探る姿もある。2050年のカーボンニュートラルに向けて電気自動車(EV)への関心が高まる中、エネルギー関連企業も自動車市場でのビジネスチャンスを狙っている。

 自動車のサブスクが徐々に存在感を高めている。19年にサービスを開始したトヨタ自動車のサブスク「KINTO ONE(キントワン)」は、21年1~11月累計の申し込み件数が約1万6千件となり、12月の1カ月間を残して20年実績の1・5倍まで増えた。

 車両代金やメンテナンス費用、任意保険を含んだサブスクサービスで取り込んでいるのが、新規の若年層だ。申し込みのうち6割がトヨタ車ユーザー以外で、年齢別では20、30歳代が4割を占める。当初3年のみだった契約期間に5年、7年を追加するなど、契約プランを拡充したことが奏功したという。

 実際、キントワンのような月定額サービスの利用者は増えている。日本自動車リース協会連合会がまとめた個人向け自動車リース保有台数(会員分)は、21年3月に43万7743台となり、1年で16・8%増えた。毎年おおむね20%ほど伸びており、10年前と比べて4倍に膨れ上がっている。まだ新車販売全体に占めるボリュームは小さいものの、「今後も有望な市場であることは間違いない」(大手自動車リース会社社長)との声は少なくない。

 これまでは、自動車リース専業企業が市場をけん引してきたが、ここに来て自動車メーカー各社が参入。トヨタのほかホンダや日産自動車、三菱自動車なども系列ディーラーを通じて定額利用商品の拡販に乗り出している。

 今後は、契約期間などを従来のリース商品よりもフレキシブルにしたプランが増えそうだ。リース専業の三菱オートリースは21年6月に発売したネット販売型の個人向け自動車リース「ピタクル」を転勤や結婚時に解約金を免除するプランとして販売。キントワンも解約金フリープランを21年12月14日から設定した。今後、他社のリース商品でも追従する動きが出てきそうだ。

 これまで日本市場でなじまなかったオンライン販売の可能性を模索する動きも出てきた。ホンダが21年10月に開始したほか、三菱自もEC大手の楽天グループと組み、オンラインで新車の定額利用サービスを販売する。日産も新型EV「アリア」を対象に始めた。

 このほかのメーカーも、オンライン販売が拡大する可能性には懐疑的な向きを見せつつも「やれる準備だけはしなければ」(スズキ国内営業幹部)、「間口を広げるための手段として研究はする」(スバル国内営業幹部)など、水面下での準備を進めている模様だ。既存の販売網でカバーしきれないニーズを取り込む手段として関心は高まりそうだ。

 企業や自治体を中心に高まるEV需要を巡る動向も注目される。今年は出光興産がタジマモーターコーポレーションと共同開発した超小型EVを市場投入するほか、佐川急便もEVベンチャーのASFと共同開発した中国製軽EVを稼働する予定になっている。

 既存の大手自動車メーカーも日産と三菱自が軽EVを投入するほか、トヨタやスバルも新型EVを国内で投入する。トヨタは30年までにEVのグローバル販売台数を年350万台に引き上げる計画を示すなど、国内メーカーもEVシフトに本腰を入れ始めている。

 EVの流通市場で台頭してきそうなのが、エネルギー関連企業だ。出光興産のほかに、コスモエネルギーホールディングスも、EVと再生可能エネルギーをセットで販売する「コスモ・ゼロカボソリューション」の営業活動を開始。脱炭素への取り組みを迫られている自治体や企業に売り込み始めた。両社とも全国に広がる給油所網を活用し、EVビジネスを強化する。

 充電マネジメントやEVカーシェアなどを手掛けるベンチャー企業のレクシヴも強みのエネルギーマネジメントを武器に、EV販売も自社で手掛ける方針。このほか、電力大手も顧客企業にEVをリース販売する体制の構築に乗り出しており、EV市場の拡大を見越した動きは、既存自動車業界だけでなく、異業種も交えた競争になりそうだ。