変革に備える取り組みを急ぐ
リサイクル部品の需要にも注目

 自動車リサイクル業界の活況度を測る目安の一つとされる使用済み自動車(ELV)の発生台数。自動車リサイクル促進センター(JARC)によると、2021年1~11月は前年同期比約2%増の約292万8千台だった。コロナ前に比べるとまだ少ないが、大きく落ち込んだ前年から少し回復した。しかし、細かく見ると複雑な状況が見えてくる。

 月当たり20万台前半でスタートした21年は、3月に35万台超を記録。5月から9月にかけては5カ月連続で前年同月を上回った。新車販売が堅調に推移し、鉄スクラップやレアメタルの価格も高かったことが背景にあると見られる。

 秋以降、状況は変化した。10月は同9・6%減と大きく落ち込み、11月も減少。減少幅は同2・2%減とやや縮小したが、今後どうなるかは予断を許さない。背景には新車の生産停滞があると見られ、「秋ぐらいから製造が戻るだろうと思っていたが、そうならなかった。解体業者に車が回ってこない。いつ正常に戻るか全く分からない」(業界筋)や「東南アジアから部品が来ないだけでこんなに影響が出るとは。グローバル社会で車を作っていることを痛感させられた」(同)などの嘆きが聞かれる。

 鉄スクラップの高騰も続く。日刊市況通信社が発表した11月の関東、中部、関西の3地区平均価格は5万円台をつけた。19年の同月と比べると約2万円上昇している。

 将来的には電気自動車(EV)の流通拡大が進み、リサイクル分野にも変革の波が訪れると予想される。すでに業界内ではEV化により車を構成する部品数が減少することを不安視する声がある。一方、「ガソリン、ディーゼル車から次世代車への移行が進むことで、車を処理する需要は一時的に増えるのでは」(同)と期待する声もある。業界では電動車の取り扱いに関する研修を実施する動きも増えており、近い将来に訪れると見られる変革の波に備え、取り組みを急ぐ。