内燃機関を搭載しない電気自動車(EV)は、走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しないことからカーボンニュートラルを実現するためのモビリティとして期待されている。ただ、製品の生産から使用、廃棄まですべての環境負荷を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)の観点では課題も見えてくる。

 EVは製造時に多大なエネルギーを必要とするリチウムイオン電池を搭載することから製造時のCO2排出量がガソリン車の2倍とされる。走行時だけで見ると、EVのCO2排出量はゼロだが、製造プロセスの見直しなどを進めCO2排出量を削減することが求められる。

 また、国・地域の電源構成によってEVのLCAは大きく影響される。例えば、発電に占める再生可能エネルギーや原子力が9割を占めるフランスと、8割近くが火力発電の日本では発電時に排出されるCO2排出量に大きな差がある。また、再エネは火力発電よりも発電コストが高い。自動車メーカーなどからは日本国内の電源構成を踏まえたエネルギー政策を国に求める声が挙がっている。

 カーボンニュートラル実現に向けて国が昨年発表した新たな「エネルギー基本計画」では2030年度に再エネの構成比を現在の約2倍となる36~38%に引き上げる計画に見直した。再エネの主力は太陽光とし、試算では1㌔㍗時の発電コストが8~11円と、石炭火力より割安になるという。ただ、日本国内に再エネを導入するための設備やプロセス導入には大きな初期投資が必要となる。一部では温室効果ガス排出量の多い国からの輸入品に関税を課す動きもある。再エネの安い地域へEVや電池の生産をシフトするのを防ぐためにも、総合的なエネルギー政策が重要となる。