石油メジャー・元売りは事業の見直しを迫られる

 カーボンニュートラル社会実現に向けて事業の抜本的見直しを迫られるのが国際石油資本(メジャー)や石油元売りだ。ガソリン、軽油を使用しないEVの本格的な普及は、エネルギー関連企業の経営を直撃する。

 先進国政府は石油・ガス開発や石炭生産への新規投資を取り止めるよう求め、欧米の機関投資家や金融機関が化石燃料関連企業からのダイベストメント(投資撤退)を実行している。資金調達に懸念が見込まれる中、欧米石油会社は上流部門である石油・ガス開発投資を減らしている。

 脱炭素化の動きに対応して、石油メジャーは、温室効果ガス削減や工場から排出される二酸化炭素(CO2)の回収・貯蔵、再生可能エネルギーなどへの投資拡大を打ち出す。投資ファンドによる環境活動家を取締役に就任させる株主提案が可決したエクソンモービルは、脱炭素化対策として2027年までに150億㌦を投資する計画を公表した。

 オランダの裁判所から、CO2排出量削減を急ぐよう求める判決が下されたシェル(ロイヤル・ダッチ・シェル)は石油・ガス生産量を減らして温暖化ガス排出量を削減する計画を進める。

 日本の石油元売りも脱・石油に向けて動き始めている。出光興産はタジマコーポレーションと提携して超小型EVを開発する。ガソリンスタンド(給油所)での再エネ充電設備を拡充するとともに、給油所を利用する超小型EVシェアリングサービスを提供していく。

 国内最大手ENEOS(エネオス)は燃料電池車向けの燃料となる水素を供給する水素ステーションの整備を着々と進めている。また、米スタートアップのアンプルと提携し、ロボットが自動でEVのバッテリーを交換するステーションを整備していくことを模索する。コスモ石油グループはレクシヴと提携して再生可能エネルギーによるEVへの給電や、系列の給油所でのEVシェアリング市場への本格参入を検討する。

 原油価格は大きく上昇し、エネルギー関連企業の業績も好調だ。それでも脱炭素社会では先細りになるのは確実視されており、今後のEVシフトの動向を固唾を飲んで見守っている。