大規模リコールに発展の可能性

慎重な見方をしているのは「(米国生産拠点のある)インディアナ州でも1日当たりの感染者数が急増している。現地の感覚では(新車販売が)絶好調という状況ではない」(中村社長)と、米国市場の先行きを楽観できる状況ではないためだ。また、感染防止対策として、ライドシェアなどからマイカーでの移動に回帰する動きがあるが、感染者数の動向次第で、今後の移動のニーズがどう変わるかも不透明だ。

品質問題も懸念材料だ。10月にタカタの事業を引き継いだジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン(JSSJ)がシートベルトの試験データを改ざんしていたことが発覚し、大規模リコールに発展する可能性がある。スバルは18年7~9月期に大規模なリコールで多額の品質関連費用を計上、前年同期の928億円の黒字から一転、25億円の赤字に転落した。「(この4~9月期に)大きなリコールがあったら厳しい決算になっていた。今後、品質改革を加速する」(中村社長)と、品質対応に神経を尖らせる。

環境対応でも不安が残る。米国カリフォルニア州はガソリン車の新車販売を段階的に規制し、35年までに禁止する。スバルは資本提携しているトヨタ自動車と電気自動車(EV)を共同開発しているほか、ハイブリッド車の投入を拡大することで、環境対応を進める方針だが、他社と比べて電動化の遅れは否めない。新型コロナ感染拡大後、政府による補助金などの効果もあって中国や欧州でEVの販売が急増しており、今後、EVの普及が一気に加速する可能性もあるが、スバルはこうした動きから取り残されるリスクがある。「環境取り組みの商品計画に変更はない」(中村社長)とするが、市場の変化で、環境戦略の見直しを迫られる可能性は高い。

業績面では、ライバルより一足早く新型コロナウイルスという未曽有の危機を乗り超えつつあるようにも見えるスバル。しかし、米国偏重や、品質対応力、そして環境対応が経営のリスクとなりかねない状況で、その足元は脆弱だ。

(編集委員 野元政宏)