予想に反して順調に業績回復を果たしたスバルだが

スバルの業績が順調に回復している。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な米国を主力市場とするだけに、新車販売の回復にも時間がかかり、2020年4~9月期連結業績の営業利益は収支トントンを見込んでいたが、結果的には306億円の黒字化を達成し、想定以上のペースで回復している。“米国一本足打法”によるリスクを打ち消した格好だ。それでも中村知美社長CEOは「本格的な回復は不透明」と、その表情は今ひとつ晴れない。

米国一本足の不安打ち消したが

スバルの7~9月期の新車販売台数は前年同期比4.6%減の23万台と、小幅なマイナスにとどまった。新型コロナ感染拡大の影響が直撃して新車販売が前年同期比で半減した4~6月期から急回復した。特にスバルの世界販売全体の7割近くを占める米国販売の7~9月期は同8.3%増と、前年を上回った。

新型コロナ感染拡大で、欧米やアジアなどの一部都市でロックダウン(都市封鎖)が実施されたことや、生産拠点の稼働停止を余儀なくされたことから、4~6月期の自動車市場は大きく落ち込み、自動車各社の業績を直撃した。その後、中国をはじめ、各市場で新車需要は回復しているが、感染者数と死者数が依然として高水準の米国に依存しているスバルは、業績回復に時間を要するとの見方が強かったが、予想に反して早いペースで回復している。

スバルの米国での販売が好調なのは、新車の供給がスムーズになったことや、ニューモデルの投入に加え「顧客基盤が優良で、世帯年収の高い人に支えられているから」(中村社長)だ。新型コロナの影響で、米国の雇用状況は悪化したが、スバルの主要なユーザーは、経済的に大きな影響を受けていないと見られる。これに加え、スバルはレンタカーなどの大口顧客(フリート)向け販売をほとんどやっていないことも、販売が安定している理由だ。

スバルは世界最大の自動車市場である中国の販売割合が2%程度にとどまるなど、米国一本足打法が経営のリスクと指摘されてきた。7~9月期業績でこれを打ち消したが、先行き慎重な見方を崩していない。スバルは業績の急回復を受けて、通期業績見通しの営業利益を1100億円と前回予想から300億円上方修正したが、これは4~9月期の営業利益分を上乗せしただけだ。