日本企業は英国への投資を進め、日英の強固な貿易関係に寄与している(写真は日産の英国生産拠点)

 日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)と英国自動車工業会(SMMT、ジョージ・ギレスピー会長)は、日英間の自由貿易協定(FTA)交渉に関する共同声明文を発表した。声明では日英間の協定が自動車産業の発展に寄与するための前提条件として、英国と欧州連合(EU)間の協定合意が不可欠だと強調。英国とEUに対して「2020年12月31日に期限を迎える移行期間の終了前に、英EUのFTA発効を確実にすることを求める」とのコメントを出した。

 英国は2月1日(英国時間の1月31日)にEUから離脱した。英国とEU間の離脱協定に基づく移行期間が開始され、その期限が今年末に迫る。この期間中に英国とEUが通商をはじめ、さまざまな分野で新ルールが決まらなければ日本企業に悪影響が出る可能性がある。

 移行期間の終了後、日英間の貿易では日EU経済連携協定(EPA)で定められた関税の優遇措置が受けられなくなる。このため、日本と英国政府は6月に両国間のFTA締結に向けた交渉を開始した。すでに発効された日EU・EPAを基礎に二国間の新たな協定を結ぶことを目指す。これを受け、自工会の豊田会長とSMMTのギレスピー会長は「歓迎する」とのコメントを出した。

 現在、英国にはトヨタ自動車や日産自動車、ホンダが完成車工場を構え、エンジンの生産拠点などが集積している。サプライヤーも多く進出して事業を展開しており、日系企業による積極的な投資が進んできた。自工会によると、19年の日英間の自動車・エンジン・部品の貿易総額は4千億円以上にのぼるという。

 また、日本の自動車メーカーにとって、英国の製造拠点は広範な欧州市場に車両を供給する役割も担う。日英間の協定がより自動車産業にとって効果のあるものにするためには英・EU間の協定が欠かせず、完成車や自動車部品の貿易については関税が適用されないことを保証する必要がある。

 自工会とSMMTが掲げる日英FTA交渉の優先項目のうち、完成車や部品を含む全ての自動車製品の関税は「継続して段階的に削減されるべき」とし、移行期間終了時の協定未発効による関税適用を避けることを要望する。日英間、英EU間のFTAがどちらも欠けずに合意に至ることを訴えた。