欧州での生産撤退を発表する八郷社長
ホンダの英国工場
英国工場で生産しているシビック・ハッチバック

 ホンダは2月19日、2021年中に欧州の現地生産から撤退すると発表した。英国のホンダ・オブ・ザ・UK・マニュファクタリング(HUM)とトルコのホンダターキーを閉鎖する。電動化が加速する欧州の工場で、電動車を生産するために追加投資しても競争力を確保できないと判断した。ホンダの八郷隆弘社長は「グローバルでの生産配置と生産能力の適正化と電動化対応のためで、英国のブレグジット(EU離脱)は関係ない」と強調した。また、ホンダは四輪車や二輪車の研究・開発体制を強化するための組織改正も実施することも発表した。

 HUMは現在、「シビック・ハッチバック」1車種のみ生産している。生産能力は年産15万台で、2018年の生産実績は残業などで前年比3.7%減の16万台を生産したが、このうち55%は北米への輸出だった。次期シビック・ハッチバックの生産を検討した結果、北米など、他地域で生産して2021年中にHUMでの完成車生産を終了することにした。従業員約3500人については解雇することで見通しで労働組合と協議するが「できる限りのことは尽くしたい」(八郷社長)としている。

 「シビック・セダン」を生産しているトルコ工場も2021年中に生産を終了する。トルコ工場の生産能力は年間5万台に対して2018年の生産台数は3万8000台にとどまっていた。従業員1100人は解雇する見通し。

 ホンダは2030年に四輪車販売台数の3分の2を電動化する計画を掲げるが、欧州では環境規制が強化されることから、グローバル目標を5年前倒しし、2025年に3分の2を電動化する計画。このため、電動モデルを拡充するが、欧州生産拠点で電動車両を生産するため追加投資しても、競争力を確保できないことから、欧州の現地生産から撤退する。

 ホンダの今期末のグローバルでの生産能力は540万台で、稼働率は97%。生産体制を見直している日本、タイ、ブラジルに今回の欧州の生産体制再編で、2021年末の生産能力は510万台に削減、生産効率化を図る。

 八郷社長は記者会見で「英国のEU離脱が(英国工場閉鎖の)理由ではない」と何度も強調したものの、英国工場で生産しているシビック・ハッチバックの英国市場向けは15%にとどまっており、英国の合意なきEU離脱が影響したと見られる。

 日産自動車もEU離脱が目前に迫っていることから英国工場での「エクストレイル」の次期モデルを生産しないことを今年2月に決定している。

 一方、ホンダは四輪車と二輪車の研究・開発体制を強化するため、組織改正を実施する。本田技術研究所については「先進技術研究」と「商品開発」に組織を分けて、それぞれの領域に集中できる体制に再編する。具体的には「先進技術研究所」は将来のモビリティ革新技術と先進技術の開発を担当する。四輪車の商品を開発する「オートモビルセンター」を新設する。四輪車を中心に、デジタル技術を活用した開発を担当する「デジタルソリューションセンター」と、ライフクリエーション事業と連携して商品を開発する「ライフクリエーションセンター」を置く。

 二輪車領域では、二輪車の営業・生産・開発・購買の各部門が組織の枠を超えて連携するため「二輪事業本部」と「二輪R&Dセンター」を組織として一体化する。これによって「1人が即断即決できる」(八郷社長)体制にする。

 一方、役員人事では神子柴寿昭専務取締役が4月1日付けで代表を持たない会長に就任する。研究開発部門トップの松本宜之専務取締役は定時株主総会で退任する。本田技術研究所の社長には三部敏宏常務執行役員が4月1日付けで就任する。