経営再建中の日産自動車は、追浜工場(神奈川県横須賀市)での生産は2027年度末に、日産車体湘南工場(神奈川県平塚市)への委託生産は26年度にそれぞれ終了する。イヴァン・エスピノーサ社長が15日、本社(横浜市西区)で会見し、表明した。追浜工場は売却の方向で、湘南工場は(第三者からの委託など)なんらかの生産も検討する。生産コストは中長期的に15%削減できる見込みだ。国内の車両工場の合理化については一区切りを迎えた。
15日午後5時、会見場に訪れたエスピノーサ社長に、集まった報道陣から無数のフラッシュが浴びせられた。「苦渋の判断だった。日産が現在の厳しい状況から脱し、再び成長軌道に戻るためにやらねばならないと判断した」。現状、約60%の国内工場の稼働率を高め、高コスト体質から脱却するために避けては通れなかったと真剣な表情ではっきりと語った。
生産を終える追浜工場をどうするかが今後の焦点だ。エスピノーサ社長は「複数のパートナーと協議している。秘密保持契約があるので詳細は報告できない。ただ、さまざまなシナリオや代替策を検討し、資産の目的を変えることを検討していく」と話した。追浜工場をめぐっては台湾・鴻海精密工業が日産との協業で電気自動車(EV)の生産を目指していることが判明しているが、エスピノーサ社長は「今のところ合弁の話や委託生産の話はしていない」と否定している。
日産は経営再建計画「Re:Nissan」で26年度までに固定費を2500億円削減する計画を掲げる。特に世界7拠点の削減はカギで、現状の年産350万台(中国を除く)の生産能力を27年度に250万台に適正化を図る方針を掲げている。「問題は、あまりにも生産能力が多すぎること」(エスピノーサ社長)。過去の経営陣が棚上げした過剰生産体制に基幹の追浜工場からメスを入れた。これにより、湘南工場への委託生産の終了と合わせ国内での生産コストは15%減らせると試算する。追浜工場から生産移管する日産自動車九州(福岡県苅田町)は稼働率を100%に高められる見込みだ。
追浜工場も決定済みの投資計画は予定通り進める。生産を終えるまでの今後2年半で、新たに新型小型SUV「キックス」の生産を始める。「ノート」などとともに段階的に生産移管し、同工場の雇用を維持する計画だ。「今移管すると(その準備に時間がとられて)供給できなくなり、ディーラーにも迷惑となる。商品の供給を継続させる」。いまキックスの生産を追浜工場で始める背景をこう説明した。
日産車体は「車両生産委託の可能性を模索しつつ、特装車・サービス部品生産などのサポート事業を担うことも視野に、雇用を最優先にあらゆる可能性を検討していく」とコメントを発表した。同社としては「閉鎖の方針は決まっていない」とも付け加えた。
大きな課題はほかにもある。追浜工場には15日の発表直前にエスピノーサ社長が訪れ、一部従業員と直接対話し、生産終了についての理解を訴えた。27年度までに計2万人を削減する難題も残っている。
日産自動車労働組合は同日、「移管後の雇用や勤務は検討中で、組合員の将来への不安が増すことは明らかだ。意志に反して結果として退職に追い込む施策は認めない」との見解を示した。
国内車両工場の再編はヤマを越えたが、パワートレイン工場についてエスピノーサ社長は「現時点で共有することはない」との回答にとどめた。
2工場の生産終了発表後の16日、日産の株価は321円まで上昇したが、昼時点では1株当たり314円と、従前の水準に戻っている。
(中村 俊甫)