九州への生産移管による影響はサプライヤーによって大きく異なる(追浜工場の生産ライン)

 日産自動車が国内の主力生産拠点である追浜工場(神奈川県横須賀市)での車両生産を2027年度末に終了することを決定した。これを受けて神奈川県周辺に生産拠点を持つサプライヤーの間で先行きを懸念する声が広がっている。追浜工場で生産している小型車は日産自動車九州(福岡県苅田町)に移管するため、ティア1(一次部品メーカー)は中国や韓国の部品メーカーとの競争激化を警戒し、ティア2(二次部品メーカー)以下のサプライヤーはティア1が調達先を九州エリアに変更することを懸念する。取引先各社は、今後日産がサプライチェーン(供給網)をどのように見直すのかを注視している。

 日産が追浜から九州に生産移管することに関して、日産を主要納入先とするティア1の幹部は「ボリュームが増えないことや、供給する部品の輸送コストがかかる可能性があることは問題だが、九州工場へ生産移管することだけによる影響は軽微」という。

 それ以上に懸念するのが、中国や韓国の価格競争力の高いサプライヤーとの競合だ。日産九州で生産するモデルは、ロケーションを生かして中国や韓国などアジアのサプライヤーからの部品調達率が高い。日産は経営再建に向けた中期経営計画「Re:Nissan」で発注先サプライヤー数を絞り込み、1社当たりの発注量を増やすためにサプライチェーンを見直すことを掲げている。このため、ティア1はアジアのサプライヤーとの受注獲得競争が激化することを懸念する。

 神奈川県内に生産拠点を持つ大手サプライヤーの首脳は「追浜工場の閉鎖を前提に、日産の九州工場や栃木工場向けに部品を供給するシミュレーションや、日産以外の受注を増やすための戦略を検討しており、日産との取引を継続しながら工場を存続させたい」という。別のサプライヤーの担当者も「日産をしっかり支えるという会社方針には変わりはない」とする。

 別の関東エリアのティア1幹部は「全体的に影響は大きい。九州への供給に対応できるサプライヤーは限られるだろう。当社も生産や雇用を見直さないといけない」と先行きを危惧する。

 さらに「閉鎖ではなく生産終了ということは組み立て以外、例えば塗装や樹脂関連などを他社に活用してもらうことを考えているのか。もしそうなら関連の仕事が残る可能性もある」と期待する。「九州(工場)をどうしていくのか見えない。単に稼働率を上げるのではなく、生産性をどう向上させ、製品群をどう展開していくのかといった前向きのメッセージがないと、意気が上がらない」と、再建の具体的な道筋の提示を求める。

 別のサプライヤーは「九州に生産拠点を持つ事業部にとっては良いニュースであるものの、追浜(工場)に納入している事業部にとっては不利な状況で、会社全体としては複雑だ」と述べる。

 また、神奈川県内に製造拠点を持つティア2以下のサプライヤーからは、ティア1が日産に追従することへの懸念が出ている。追浜工場で手掛けている小型車向けの部品について、ティア1が生産拠点を関東から九州に移すとなれば、部品や素材の調達先も九州地区など西日本が中心になるとみられる。九州周辺に拠点を持たないティア2以下にとっては、輸送コストなどで不利になるからだ。

 東京商工リサーチによると、昨年12月9日時点での日産の国内の取引先は1万3283社で、このうち製造業が5139社。仕入れ先のうち、ティア1が1088社、ティア2が4123社と、国内に巨大なサプライチェーンを抱えている。日産は追浜工場での生産終了に加えて、日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)での委託生産も26年度末までに終了する予定で、神奈川県内での車両生産がなくなる。日産の都道府県別の取引先では神奈川県が1757社と、東京都に次いで2番目に多い。このうち、一次仕入れ先が525社、二次仕入れ先が808社にもなる。

 取引先のサプライヤー各社は、日産の国内生産体制の見直しによる影響を予想しつつ、事業戦略の抜本的な見直しも含めた対策の検討を迫られている。