日本製鉄の和歌山製鉄所(画像 日本製鉄)

日本製鉄は2月7日、呉製鉄所を閉鎖するとともに、和歌山製鉄所の第1高炉を休止して生産能力を削減すると発表した。米中貿易摩擦などによる国内製造業向け鉄鋼需要の低迷に加え、中国鉄鋼メーカーを中心とした鉄鋼生産能力の余剰で市場価格も低迷している。日鉄は設備も老朽化していることから生産能力を削減して構造改革に乗り出す。

2020年4月に合併する予定の日鉄日新製鋼の呉製鉄所の高炉を2021年上期末を目処に休止し、熱延・酸洗などの残りの全設備を2023年上期末に休止して閉鎖する。高炉を含む製鉄所を閉鎖するのは国内では初めて。日鉄の和歌山製鉄所は2基ある高炉のうち、第1高炉を2022年上期を目処に休止する。

薄板では、日鉄日新製鋼の堺製造所の電気亜鉛めっきライン、連続焼鈍ライン、ナンバー1溶融アルミめっきラインの合計3ラインを休止して君津、名古屋などのラインに生産を集約する。八幡製鉄所(小倉地区)の高炉と製鋼設備を休止する時期についても2020年度末の予定を2020年度上期末に前倒しする。

公表済みの分を含めて合計4基の高炉を閉鎖することになり、日鉄グループの粗鋼生産能力は全体の1割に当たる年間約500万トン削減される。これら設備休止による直接的な収益改善効果として約1000億円を見込む。

今回の生産体制見直しをステップとして競争力ある最適生産体制の構築に向けた検討は継続する。同時に、超ハイテン鋼板の供給体制強化や、電磁鋼板能力・品質向上対策など、成長が見込める分野への戦略的投資を実行し、将来的に収益回復の見込みがない不採算海外事業の再編・撤退を加速する方針。

日鉄は自動車向けなどの需要低迷や、原燃料価格の高止まりによる収益率の悪化、競争激化による納入先との値上げ交渉も難航していることなどから業績が悪化。2020年3月期連結業績は、生産設備の減損処理を計上、当期損益が過去最大となる4400億円の赤字に転落する見通し。