インドアゴルフ練習場を併設するエネオス
新たな油外収益を探して多くの事業者が来場した全石連の見本市

 ガソリン需要が年々減り続ける中で、ガソリンスタンド(給油所)経営でいかに「油外収益」を増やしていくかが重要課題だ。最新のデジタル技術を活用した手法も登場している。さらに、タイヤやオイル、バッテリーといった従来の物販に加え、ゴルフやスポーツジムなど〝車外収益〟に手を伸ばす動きも広がる。生き残りに向けた新たな収益源の確保を急ぐ。

 「通年、稼げる油外を早く育てていかないと」―。6月中旬に全国石油商業組合連合会(全石連、森洋会長)が札幌市で実施した給油所向け商材の展示会「SSビジネス見本市」。来場した道内小売り事業者の目当ては新しい油外収益だ。北海道など降雪地の場合、除雪機の販売や除雪作業の受託など特殊な油外収益もあるとはいえ、落ち続けるガソリン収益を埋め合わせるためになんらかの新規事業への参入などを各社が検討しているのが実情だ。

 資源エネルギー庁によると、2024年度のガソリン需要は4355万㌔㍑(前年度比2.1%減)。ピークの04年と比べると3割ほど減少した。同庁は29年度までは毎年2%以上のペースで減少する見通しも示しており、今後、給油所の事業環境が大幅に好転する可能性は見込みにくい。

 石油元売り企業は系列小売りの油外収益拡大に向けた方策を相次いで打ち出している。例えば、コスモ石油マーケティングが開発した「デジタルステーションシステム(DSS)」。このシステムは、人工知能(AI)でリースや車検の購買確率が高い顧客を判別できるもの。拠点に設置したカメラで来店車両のナンバーを撮影し、そのナンバーの車検証情報を同社が国土交通省から購入。車両情報を基にAIが購買確率を算出し、次回来店時などにスタッフに情報を配信することで購買の可能性がある顧客に絞って商品を提案することができる。一定のコストは発生するが「人材確保も難しくなっており、生産性の向上効果を見込んで導入する企業が増えている」と同社担当者は言う。

 エネオスが力を入れているのが異業種併設型の店舗づくりだ。同社は昨年、スポーツジムやマッサージ店、インドアゴルフ練習場、ランドリー、飲食店、ジム、ペットショップを敷地内に併設した複合商業施設型の直営ガソリンスタンドを茨城県牛久市に出店した。同店舗は新業態の需要を検証するための実証拠点。この中で「インドアゴルフ練習場の需要が特に高かった」(同社担当者)という。給油所の空きスペースを使った新業態として地場の小売り事業者に提案を始めた。

 油外収益を探す給油所を新たな有力ビジネスパートナーに位置付ける中古車買い取りチェーンもある。ユー・エス・エス系のラビット・カーネットワーク(山中雅文社長、東京都江戸川区)は、給油所専用の新しい加盟プランを開発し、今年から提案を始めた。従来の加盟プランと比べて看板などにかかる費用を抑制し、安い費用で加盟できるようにした。

 一時過熱しかけていた電気自動車(EV)ブームは一服したものの、過疎地を中心に依然として給油所の先行きは厳しい。1994年度末は6万カ所あったが、いまは半分以下となっている。全石連の森会長は「従来の考え方ではいよいよ生き残れない時代になる。新しい在り方を見つけなければいけない」と会員企業に油外獲得や多角化経営の重要性を唱える。