ホンダはCASE対応の本格化に向けて、4月1日付けで研究開発部門の組織を改正した。四輪車の研究開発部門だった「四輪R&Dセンター」と、ロボティクスやAI(人工知能)を担当する「R&DセンターX」について、先進的な研究に特化した「先進技術研究所」、MaaSを含めデジタル技術を活用して競争力を強化する「デジタルソリューションセンター」、そして市販化を前提に効率的に商品開発する「オートモビルセンター」に再編した。ITや先端分野の開発に注力する体制を構築するとともに、コンベンショナルなエンジンなど、機械系重視からデジタル技術の活用へとエンジニアの意識改革を図る狙いもある。

CASE対応では、さまざまな分野で大きな投資が必要となってくる。ホンダは2025年までに量産車の開発工数を30%削減する計画で、ここで生み出された工数を将来に向けた先進領域での研究・開発に充当してCASE関連の研究開発力を強化する。新設する「統括機能本部」が全体の戦略と経営資源の配分を管理し、選択と集中によって投資にメリハリをつける。「ホンダの技術者が挑戦できる環境を整えた」(八郷社長)としている。

内燃機関の開発では一目置かれていたホンダだが、自動運転や電動化では存在感が薄く、日米欧のライバル自動車メーカーから水をあけられているとの見方が強い。今回のホンダミーティングでも、実際に開発した技術の体験や試乗はほぼ皆無で、ホンダが開発しているCASE関連技術のプレゼンに終始し、実際に競争力のある技術を開発できているのかは実感できなかった。

これまで独立独歩の道を歩んできたホンダだが、GMとの燃料電池車や自動運転サービスでの提携、日立製作所との電動車両用モーター事業での協業など、「仲間づくり」にも乗り出しているのは「AIや自動運転などの先進技術のすべてを、1社単独で賄うことはできない」との危機感に現れだ。さらに研究開発部門の組織改正やエンジニアの意識改革によってCASE分野での出遅れを取り戻そうと必死のホンダ。世界の自動車業界の中で、内燃機関分野と同様に、CASE領域で存在感を示すことができなければ命取りになりかねない。

(野元 政宏)