日本製鉄は6月14日、米国のUSスチールとのパートナーシップをトランプ米大統領が承認したと発表した。両社は米国政府との間で、2028年までに日鉄が米国に約110億ドル(約1兆6000億円)投資することを定めた国家安全保障協定(NSA)を締結した。あわせてUSスチールは米国政府に対して、経営の重要事項に関して拒否権を発動できる黄金株を発行する。米国独禁当局の審査も完了しており、日鉄は今回のトランプ大統領の承認で、パートナーシップの実行に必要なすべての規制当局からの承認を取得。USスチールを買収できる見通しとなった。
日鉄のUSスチール買収を巡っては、両社や株主からの承認は得ていたが、バイデン前政権が今年1月、国家安全保障上の懸念があるとして買収を禁止する大統領令を出していた。
その後、トランプ大統領が4月に対米外国投資委員会(CFIUS)に買収を再審査する大統領令を発出。CFIUSの審査結果を踏まえ、一定の条件を満たせば国家安全保障上の問題はないとして、買収を禁止したバイデン前政権の大統領令を修正した。
日鉄は14日、トランプ大統領が「米国鉄鋼業界で前例のない大規模な投資を実現して10万人以上の雇用を守り、創出するUSスチールとのパートナーシップを承認した」と発表した。両社は「パートナーシップが今後、何世代にもわたって地域と家族を支える大規模な投資をもたらす。米国の製造業を再び偉大にするため、コミットメントを実行に移していくことを楽しみにしている」とコメントした。
両社と米国政府が締結したNSAには、28年以降に完了する予定のグリーンフィールドのプロジェクトでの初期投資を含めて28年までに約110億ドルを投資することや、USスチールの取締役など、経営の重要事項に関して拒否権を行使できる黄金株を米国政府が取得すること、米国生産の競争力強化などのコミットメントが定められている。
また、武藤容治経済産業相は14日、米国政府が日本製鉄のUSスチール買収を承認したことを受けて「日米間の緊密なパートナーシップの強化につながる」と歓迎のコメントを発表した。