三菱自の最量販車種に成長したデリカミニ

 三菱自動車は、全面改良して10月29日に発売する軽自動車「デリカミニ」で系列ディーラー1店舗当たりの平均販売台数で、国内市場トップのホンダ「N―BOX(エヌボックス)」を上回る実績を目指す。2024年度の販売台数では5倍超もの開きがあるが、店舗単位で見ると単純計算でデリカミニの月販平均約6.3台に対し、N-BOXは約8.3台と射程圏内に入っている。まずは店舗ごとに販売効率を高めることにより、全体の底上げにもつなげていく考え。また、軽市場で一定の販売力がある業販店向けの施策も充実することで、軽市場で存在感を高めていく狙いだ。

 「本気でN―BOXに勝ちに行く」と、三菱自の幹部は新型デリカミニに期待をかける。初代は、軽市場で主流となっているスーパーハイト型の「eKクロススペース」の実質的な後継車種として23年5月に発売。アウトドアでの使用をイメージした三菱車らしいデザインが支持され、23年度は3万7千台、24年度は3万9千台と販売を伸ばした。eKクロススペースがモデルライフ(20年3月~23年5月)で累計約3万1千台だったことを考慮すると、倍増以上の勢いを見せる。今や三菱自の系列ディーラーの経営戦略に欠かせない最量販車種に成長した。

 一方のN―BOXは24年度に21万台超を販売し、登録車を含む国内販売で4年連続の首位を獲得。4万台に届かなかったデリカミニとは、大きな差がある。しかし、系列ディーラー1店舗当たりの販売効率で見ると、差は縮まる。ホンダは全国に2100店舗を構えるが、三菱自は521店舗(25年3月末時点)と少ない。単純計算では1店舗当たりの月販平均では約2台差となり、「もうひと踏ん張りで超えられる」と、同社の幹部は自信を見せる。

 販売増への流れを引き寄せようと、新型ではより個性を高める方向で進化を目指した。例えば、初代で目を引いた円形のLEDポジションランプを大型化し、特徴的なデザインを際立たせた。軽では業界初というエンジンのレスポンスやトラクションコントロールなどの制御を変更できるドライブモードも採用した。悪路での走破力を高める「グラベル」「スノー」などのモードも用意し、アウトドアのニーズが高いユーザーに対応する。

 また、直販だけではなく、業販ルートでの拡販にも力を入れる。三菱自ではかつて、業販網も重要な販路となっていたが、三菱車全体のボリュームが低下する中で勢いが弱まっていた。ただ、三菱自にとってはライバルに比べて直販店が少ない事情もあり、販売網を補完する意味でも業販店の活用は欠かせない。そこで、同社は新型に向け、7年ぶりに業販店を対象とした説明会や試乗会などを実施。軽の需要が大きい地方での販売促進につなげる狙いだ。

 立ち上がりは順調だ。8月22日の予約開始から1カ月足らずで、25年度内の月販目標と同等の4千台を受け付けた。初代の発売当初と比べても、ハイペースで受注を積み上げているという。

 対するN―BOXは、相次ぐ値上げなどで「販売面に影響が出ている部分もある」(ホンダ・川坂英生統括部長)としている。販売網や代替母体で勝るN-BOXを絶対数で上回るのは難しいとみられるが、店舗や業販店ごとの販売力を高め続ければ、一矢を報いるチャンスは十分にありそうだ。

(水鳥 友哉、舩山 知彦)