大型車のホイールナットをハンマーでたたいて点検する
自動車整備人材確保・育成推進協議会と国土交通省が共同出展する「チャレンジ!未来の自動車整備士(カードクター)!」
キッザニアとのコラボ企画。実際にタイヤを交換する
寝板を使ってクルマの下に潜り込む経験も

前回から名称を一新した「ジャパンモビリティショー(JMS)」が東京ビッグサイトで開幕した。会場では自動車メーカー各社の最新モデルの展示をはじめ、未来のモビリティ体験、スタートアップによる新技術の提案、さらに歴史やカルチャーにフォーカスした企画など、見どころは尽きない。

注目を集める今年のJMSを、日刊自動車新聞電子版の編集メンバーが独自の視点で気になるポイントを紹介する。

「いくっしょ、モビショー!」。会期は11月9日まで。

 

整備士を身近に

JMS2025の会場では、小学生らに将来の職業のひとつとして関心を高めてもらおうと、自動車整備士の仕事の魅力をアピールする機会が設けられている。クルマを安全・快適で環境に優しく使い続けるために欠かせない整備士は、高齢化や人材不足といった課題に直面しており、次世代を担う子どもたちに整備士の仕事を身近に感じてもらい、将来的にモビリティ社会を支える人材の育成につなげることを目指す。

自動車業界団体でつくる「自動車整備人材確保・育成推進協議会」と国土交通省は共同で、未就学児や小学生が実物のクルマや工具に触れながら、整備の楽しさを体験できるブース「チャレンジ!未来の自動車整備士(カードクター)!」を出展。官民が連携し、整備士体験ブースを出すのは、前回のJMS2023に次いで2回目だ。

共同ブースでは、(1)車の点検・整備の体験、(2)ボルト・ネジの締め付け体験、(3)エンジン分解・組み立て体験、(4)大型車ホイールナット緩み点検体験、といった本格的なプログラムを実施。子どもたちが本物の工具を手に取り、インストラクターから点検や修理のやり方を教わりながら、一緒に作業に挑戦。エンジンやタイヤなどをチェックし、クルマの安全を確認する。

ブースでは、整備士のつなぎを着た子どもたちが、インストラクターの説明を聞きながら、真剣なまなざしで大型車のホイールナットの締め付け具合をハンマーで確認したり、小型エンジンを分解したりした。本番さながらの作業を終えると、ほっとした様子で笑顔を見せて喜んでいた。

国交省自動車整備課の多田善隆課長は「未来の自動車整備士のためにつくられたブース。クルマの楽しさや整備士のカッコよさを実感してもらいたい」などと、整備士の人材育成に業界を挙げて取り組む考えを強調した。

 

キッザニアとのコラボ企画も

会場では、子ども向け職業・社会体験施設「キッザニア」とのコラボレーション企画「アウト・オブ・キッザニア・イン・ジャパンモビリティショー」も展開している。自動車メーカー各社別に10ブースを設置。さまざまな整備士の仕事に触れ、熱心に作業する様子が目立った。写真や動画を撮影、作業の様子を見守る保護者にも整備士の役割や社会的意義を伝える好機といえる。

キッザニア企画では、〝モビリティショー会場にこどもたちが働く街が出現〟とうたい、クルマに関するさまざまな職業体験の機会を提供する。「次世代モビリティのデザイナーの仕事」「電動モビリティを組み立てる仕事」「新たなモビリティのテストドライバーの仕事」など、10プログラムを用意した。

このうち「カーディーラー整備士の仕事」では、ディーラーを訪れるユーザーからクルマを預かったと想定。電動レンチを使用して実際にタイヤを運んで交換したり、寝板を使って車両下回りを点検したりしていた。

日本自動車工業会モビリティショー委員会の貝原典也委員長(ホンダ副社長)は、「将来を背負う子供たちに機会を提供したいということで始めた。自動車各社のユニホームに袖を通し、整備作業の現場を体験して、よりモビリティ社会に興味を持ってもらいたい」と説明した。