従来、自動車業界の競争力は、燃費やパワーといったパワートレインに大きく左右されてきた。ホンダはF1に代表されるように内燃機関の技術力で他社をリードし、存在感を示してきた。しかし、現在の自動車産業のトレンドはコネクテッド(C)、自動運転(A)、シェアリング(S)、電動化(E)の頭文字をとった「CASE」と呼ばれる技術に競争の軸が移ってきている。CASE領域では出遅れが指摘されているホンダだが「自動車産業の大変革期に、先進領域の研究開発を強化していく」(八郷隆弘社長)方針を掲げ、今回のホンダミーティングでCASEに関する研究開発が目立った。

具体的には交通事故ゼロ社会に向けて、2020年に高速道路での自動運転技術を確立することを改めて表明した。高速道路での車線キープと、追い越しのための車線変更をハンドルから手を離した状態で自動運転するのに加え、渋滞時には、ドライバーがカーTVの視聴やスマートフォンを操作するなど、前方を見ていなくても自動運転する。これを実現するためにカメラ以外にも高価なセンサーであるライダー(レーザースキャナー)を5個、ミリ波レーダーも5個搭載する予定で、車両価格は高価になる見通し。「自動運転に対してどんな需要があって、どうやって顧客に訴求するか検討して商品化する」(八郷社長)構えだ。

また、一般公道では、交差点での右・左折や工事区間の譲り合いなど、ざまざまな場面で、車両や二輪車だけでなく、歩行者や自転車などの交通参加者の行動を予測して協調行動する必要がある。このため、画像認識AIで強みを持つ中国のセンスタイムと協力して開発する自動運転用AIを活用することを想定する。

電動化技術では、どの地域でも調達できるバッテリーセルで、セダンやSUVなど、ざまざまな車種に搭載できる共用のバッテリーパックを一括開発する。EVの基本的な構造を50:50の重量配分、リア駆動、大型平置きバッテリーパックをベースとして、リアドライブユニットをさまざまな車種で共用する。これによってコスト競争力の高いEVを短期間で品揃えすることを狙う。

ホンダはプラグインハイブリッドカーやEV、電動二輪車といった電動モビリティに加え、充電ステーションユニットや脱着式可搬バッテリー、水素ステーションなどのエネルギーサービスも手がけている。この特徴を生かして、電動車とエネルギーサービスをつなぐとともに、電力会社や充電サービス会社などともオープンで連携・協力し、再生可能エネルギーを最も効率的に利用するための「ホンダeMaaS」プラットフォームを構築する構想も公表した。再生可能エネルギーで発電した電力の余剰分を、電動車に搭載したバッテリーを充放電することで、ピークカットやピークシフトなど、電気の使用量と発電量を平準化する仕組みで、今後、幅広い企業に参加を呼びかけていく。

市場拡大が注目されるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)では、ラストワンマイルモビリティの移動手段として小型電動モビリティを開発するのに加え、ゼネラルモーターズ(GM)の自動運転開発会社のGMクルーズと共同開発しているライドシェア専用自動運転車を使ったサービスの研究を進めている。

コネクテッド領域では2020年に制御系ソフトウエアを通信で書き換える技術を実用化するほか、ガソリン給油や駐車料金の支払いをスマートフォンを使って車内でデジタル決済できる機能も搭載していく方針。