車載用半導体大手のルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長兼CEO(最高経営責任者)は、2025年1~3月期業績発表のオンライン会見で、トランプ政権が打ち出している追加関税の影響について「数量のインパクトは大きい。単価が500万円の製品の価格が25%上がれば数量が減ることになる」と述べ、自動車向け半導体の出荷量が減少することに懸念を示した。
4~6月期業績予想は米国の関税政策の影響をほぼ織り込まない形で公表し、売上高の中央値は3020億円で前年同期比15.8%減。営業利益率は同5.8㌽ダウンして25%となる見込み。関税の影響による市場の見通しが不透明なことから、自動車向けチャネル在庫は引き続き抑制するが「ショートリードタイムでのオーダーが増えている」ことから、仕掛品の自社在庫は高い水準で確保する。
関税の影響を除く車載半導体事業は、中国の地場系自動車メーカーの電気自動車(EV)向けや先進運転支援システム(ADAS)用に新世代の28㌨㍍(nm)級の受注が好調なのに加え、日本や欧州の自動車メーカーが40㌨㍍から28㌨㍍への置き換えが進むことから、需要は回復すると見ている。
また、追加関税分の負担について柴田社長は「価格決定を支配するのは競合の状況。(追加関税分を)負担したり、価格を下げる企業があると大変厳しい。顧客の理解を得ながら交渉していくしかない」と述べるにとどめた。
一方、EV向けパワー半導体事業を拡充するため、25年早期に立ち上げる予定だった甲府工場は「需要は不透明なので、期限をなくして限界まで慎重な目線にしているのは変わっていない」といい、操業のメドは立ってない状況だ。