レクサスの次世代EVコンセプト 「LF―ZC」

 トヨタ自動車が、2035年に高級ブランド「レクサス」を電気自動車(EV)専用ブランドにする方針の撤回を検討していることが分かった。30年には欧州、北米、中国で販売全車をEVとする中間目標を持つが、実需や現地の政策などを踏まえ、達成が困難と判断した。一方、中国では単独資本でレクサスのEV生産に乗り出す。トヨタブランドも含め、EV事業は先進国と中国を分けた〝二正面作戦〟を採る形で、EVのグローバル戦略を修正する。

 トヨタは21年にEV戦略を発表し、30年にEVの世界販売を350万台とする見通しを掲げた。このうち、レクサスのEV販売は30年に100万台とし、35年にはレクサス全車をEV化する方針だった。複数保有が一般的な富裕層向けのプレミアムブランドは量産車よりEV化が早く進むとみていたためだ。

 ただ、トヨタ全体の目標として掲げた「26年にEV150万台」は、足元のEV失速を踏まえて、仕入先に示す「基準台数」を100万台、80万台と2度にわたり引き下げた。トヨタが示す基準台数は販売目標ではなく、あくまで実需に沿って仕入先に示す目安だが、需要を見極めて柔軟に見直した格好だ。一方で比亜迪(BYD)など中国メーカーが攻勢を強めるプラグインハイブリッド車(PHV)は積極的に生産を増やし、電動車シフトを進める。

 EVシフトが先行する見通しだった高級車市場も目算が狂い始めている。メルセデス・ベンツは30年までに「市場が許す限り」新車販売のすべてをEVとする計画を撤回するなど、EVシフトに前のめりだった欧米勢も方針転換を余儀なくされている。トランプ政権がEV補助策を廃止するなど、レクサスの主力市場である米国の需要が不透明であることからトヨタも戦略の見直しを迫られている。

 一方で中国ではEV投入を加速する。17日にはレクサスブランドのEVを開発・生産する子会社を上海に設立した。トヨタは現在、現地企業と合弁会社を展開するが、レクサスでは単独資本で中国市場に挑む。

 また、これを機にトヨタ本体では、先進国向けとは別に中国市場だけをターゲットとするEVの開発体制を整える。先進技術を搭載したEVを短期間に投入できる体制を築き、部品の調達でも現地製を大幅に増やす。これらの施策により、中国の現地メーカーに対抗できるEVを投入していく。