メーカーを問わず、EVは販売予測が難しいとされる

 トヨタ自動車が、電気自動車(EV)の基幹部品である駆動用電池の生産能力を増強する。国内では政府の補助金を活用し、電池生産能力を年34㌐㍗時増やす。北米では電池生産と外部調達分を合わせ、すでに年50㌐㍗時以上の電池確保にめどをつけている。ただ、足元のEV需要低迷を見据え、部品メーカーには2026年のEV世界生産台数を100万台程度とする計画を伝えた。一方でプラグインハイブリッド車(PHV)の生産は増やす方針だ。EV投資を着実に進めつつも、慎重に需要動向を見極め、投資リスクを回避する考えだ。 

 トヨタは政府の車載電池補助分で23年に年25㌐㍗時分、24年に年9㌐㍗時分の供給力を増やす。EV「bZ4X」に換算すると実に47万台分に相当する。北米では30年までに年30㌐㍗時以上を生産する方針を掲げ、さらに25年にはLGエナジーソリューションから年20㌐㍗時の電池供給を受ける計画だ。単純計算で国内と北米でEV117万台分の電池確保にめどをつけている。中国ではCATL(寧徳時代新能源科技)や比亜迪(BYD)からも電池を調達する方針だ。

 電池供給体制を固めていく中で、トヨタはEVの世界販売を26年に150万台、30年に350万台とする計画を公表している。ただ、部品メーカーに伝えた最新の生産計画では、26年に100万台と、販売目標に対して約3割少ない台数を示した。トヨタは部品メーカーに伝えた数字については認めつつも「26年150万台、30年350万台を基準に電池の確保も含め、EVをはじめとした電動車を生産する構えを進めていることには変わりない」と説明する。

 パワートレインの「マルチパスウェイ(全方位戦略)」を掲げるトヨタは、EV需要の失速を横目に需要が高まっているPHVの生産を増やしていく方針だ。トヨタの佐藤恒治社長は5月の決算発表会見で、EV150万台目標にPHVを含める考えを披露した。他社からのOEM(相手先ブランドによる生産)供給やPHVの追加も踏まえ、26年にEV150万台の〝構え〟は維持したい考え。

 トヨタが示した生産計画について、部品メーカーの間では「PHV、HV注力の方向であることは間違いない」「EVの計画見直しは世界的な流れでもあり、ある程度は想定内」と冷静に受け止められている。また、たとえ計画が変更されても「世界的にEVへのシフトは進むと想定される。遅れをとらないように体制、構えはしっかりと進め、ものづくり力を強化する」などの声もあった。

 EVはガソリン車などと違って販売台数の予測が難しい。巨額投資が必要な電池生産には大きなリスクがつきまとう。トヨタは電池生産の〝原単位〟を緻密に管理し、こうしたリスクを回避していく考えだ。