ニデックは9月26日、提出を延期していた2025年3月期の有価証券報告書を関東財務局に提出したと発表した。同時に、監査法人のPwCジャパンから有価証券報告書の連結財務諸表について監査意見を表明しない「意見不表明」との監査報告書を受領したことも明らかにした。ニデックはグループ会社の経営陣が関与した可能性のある不適切な会計処理が発覚し、現在、外部の弁護士などによる第三者委員会が調査している。また今回、海外子会社で新たな不正の疑いが発覚したことも発表した。

ニデックは、イタリアの連結子会社が製造するモーターについて米国での原産国申告に誤りがあり、未払い関税が発生している事実が発覚したことから外部専門家と調査してきた。この影響で、25年3月期の有価証券報告書について、当初の提出期限である6月30日に提出できず、提出期限の延長を申請していた。今回、期限である9月26日に提出を完了した。

イタリア子会社の問題では、法令違反の可能性についての情報提供を受けたニデックの役職員が経営陣に報告しなかったことが理由で、早期に是正できなかったとしている。ニデックでは連結決算に影響する重要なリスク情報を収集する内部統制が適切に整備されていなかったとしている。

また、イタリア子会社とは別に、中国の子会社ニデックテクノモータ(浙江)がサプライヤーからの値引きに相当する購買一時金の会計処理が適切に行われいなかったことを確認した。詳細は現在も調査中ながら、現時点で修正を認識している金額を計上して25年3月期連結業績の訂正を発表した。営業利益は当初の公表値から20億円マイナスの2381億円、税引前利益が同32億円マイナスの2333億円、最終利益は同33億円マイナスの1643億円に修正した。

さらに、ニデックでは第三者委員会の設立を公表した9月3日以降、イタリア子会社の関税問題に関連する社内調査で、新たにニデックエレシスが過去に中国に輸出した中古品の申告価格を不当に低く申告していた疑いが発覚した。ニデックのスイス子会社でも、必要な登録をせずに輸出取引したケースでも不適切な対応があった疑いがあるという。このほか、内部通報でニデックの中国子会社が源泉所得税を意図的に過少申告していた疑いも発覚した、としている。

ニデックはこれら新たに見つかった不正の疑いについても、外部専門家や社内で追加調査することを発表した。

なお、意見不表明とした監査法人のPwCジャパンは、ニデックが提出した有価証券報告書について、連結財務諸表に対する意見表明の基礎となる監査証拠を十分かつ適切に入手できていないとしている。加えて、新たな虚偽表示があった場合、連結財務諸表全体に重要かつ広範な影響が及ぶため、監査意見の表明を見送った、としている。