新中計を説明する鈴木俊宏社長
インドと欧州ではEV投入計画を見直した(eビターラ)

 スズキは20日、新たな中期経営計画を策定し、最終2030年度に売上高8兆円を目指すと発表した。営業利益は8千億円、営業利益率は10%に設定した。主力市場のインドでは乗用車シェア5割を目指すほか、年間400万台の生産体制を構築し、インドからの輸出も増やす。日本では登録車の販売を伸ばして収益性を高める。一方、インドと欧州の電気自動車(EV)投入計画は、23年発表の成長戦略から下方修正した。鈴木俊宏社長は「世の中が混とんとしている」と語り、市場動向を見極めながら電動車シフトを慎重に進めていく考えを示した。

 前中計(21年~25年度)の目標値を23年度に達成したため、1年前倒しで新たな中計をつくった。

 新中計では、23年に発表した「2030年度に向けた成長戦略」の目標数値を見直した。売上高は7兆円から8兆円とし、ROE(自己資本利益率)は13.0%、世界販売を420万台とした。物価上昇などを踏まえた値上げなどで売上高が増える。30年代前半に営業利益率10%以上、ROE15.0%の実現を目指す。

 けん引役は主力のインド市場だ。需要が拡大するSUVやMPVのラインアップを強化する。今後、増加する中間層向けのエントリーモデルも強化する。二輪車から四輪車に乗り替えるユーザーのニーズに合わせた商品を展開し、乗用車シェア5割への復帰を目指す。

 インドでは年産400万台体制を構築しつつある。300万台をインド内需、残り100万台を輸出に振り向ける。インド生産車をグローバル展開し、中近東やアフリカなど成長市場への需要にも対応する。

 EV計画も見直した。30年度までにインドで6モデル、欧州で5モデルの投入を計画していたが、それぞれ4モデルに変更した。日本は6モデルのまま据え置いた。25年夏以降に発売する「eビターラ」を皮切りに、需要動向を見ながらラインアップを増やしていく。日本では25年度中に軽商用EVも発売する。

 車載電池の内製化も見据える。同社が出資するエリーパワー(吉田博一会長兼CEO、東京都品川区)の川崎事業所内に「バッテリーR&Dセンター」を開設し、車載と定置用の双方に活用できる電池を開発するほか、電池材料の調達なども検討していく。

 設備投資は2兆円で、このうち1兆2千億円をインドに投じる。研究開発費は2兆円で、電動化やソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)関連に1兆1千億円、内燃機関関連に1千億円、軽量化や車両技術などに1500億円を充てる。

(2025/2/21修正)