軽用eアクスル
小型車も想定した次世代HV向けシステム
「エネルギーの極小化を目指す」と話す鈴木俊宏社長

 スズキは17日、2030年代初頭に軽自動車を今より15%(約100㌔㌘)軽くする開発目標を明らかにした。マイルドハイブリッド車(HV)のモーター出力を高めたり、電気自動車(EV)化も進める。鈴木俊宏社長は「スズキの行動理念『小・少・軽・短・美』で、エネルギーの極小化を目指す」と語った。

 同日、ベルサール半蔵門(東京都千代田区)で技術戦略説明会を開いて明らかにした。

 具体的には「アルト」の現行モデル(680㌔㌘)比で100㌔㌘の軽量化を目指す。同社で最も軽いアルトで軽量化を進め、開発過程で培った技術を他車種にも展開していく考えだ。車体骨格やエンジン、内装など全構成部品の材料を見直すほか、ホットスタンプや発泡樹脂の採用も検討していく。技術開発を統括する加藤勝弘専務役員は「本当に地道な作業になるが、これがスズキの真骨頂だし、社会に貢献できることだと思っている」と語った。

 軽自動車への搭載を想定したeアクスルも初公開した。同社はこのほか、25年までに市販する予定のEV「eVX」など小型車向けの2機種を開発している。

 軽向けは、モーターとインバーター、減速機を高さ約20㌢㍍のユニットに組み込んだ自社設計だ。400㌾の電圧で動く。軽EVでは、このeアクスルに、外部調達したリン酸鉄リチウム(LFP)電池を組み合わせる方針だ。

 次世代ハイブリッドシステム「スーパーエネチャージ」では、既存の48㌾マイルドHVから、電気系がリッチなストロングHVまで、仕様や車格に合わせモーター出力や電池搭載量を変えられるよう設計する。

 また、マイルドHVのモーターをベルト駆動からギア駆動に改め、エンジンと変速機の間に組み込むことで機械損失を減らした。エネルギー回生量も増やす。担当者は「燃費は2桁%以上、改善する」と説明した。小型車への搭載を念頭に、小型・軽量化に取り組んでいく。

 HVに組み合わせるエンジンは「スイフト」などに搭載する最新「Z12E」型を進化させる。軽量・低フリクション技術を生かし、圧縮天然ガス(CNG)やバイオガス、水素などへの対応も視野に入れる。

 説明会ではこのほか、リサイクル技術やソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)、先進運転支援システム(ADAS)の開発方針も示した。SDVでは、ユーザーが求める機能に絞って対応する。鈴木社長は「生活に根ざした車なら『これ(くらいの機能)でいいよね』というのがあると思う」と話した。

 ADASは、障害物や渋滞が多いインドに適した低速でも精度良く動作するシステムを開発していく。