整備事業者にとって顧客を増やし、車検や整備などの入庫につなげるために車両販売が不可欠となっている。整備事業者も加盟している車販チェーン各社などでは、個人向けリース商品を強化している。新たなプランを打ち出したり、販売や支払いに新たな方法を採り入れたりするところもある。自動車税などが料金に含まれているリースは、月々のユーザーの負担をならせることがメリットだ。また、「所有から使用へ」という価値観の変化も利用増につながっている。最近はサブスクリプション(定額利用)をうたう商品も登場しており、今後もリースの提案が活発になりそうだ。
車販チェーンが展開するカーリースの主力商品は、契約期間が7年程度のものが多い。特に、新車の軽自動車では支払額を月1万円程度に抑えられる点をアピールしている。こうした中で、カーコンビニ倶楽部(林成治社長、東京都港区)の「カーコンカーリース」は、より期間の長い商品で差別化している。7年(残価設定あり)と9年(残価設定なし)のプランを用意しているが、契約者の70%以上が9年契約を選んでいるという。7年間乗り続ければ無条件で中途解約でき、残り2年間のリース料の負担もない。同社の山崎亮祐執行役員は「9年(契約)の方が今後のライフスタイルに合わせられる」と、人気の理由を分析している。
リース契約の方法も変わりつつある。MIC(増田信夫社長、横浜市都筑区)が提供する新車リース「ニコノリ」は、オンライン商談が特徴だ。これを始めた2017年は、月1~5件程度だったが、20年は同100件、23年は同300件を超えた。安田倫開発部部長は国産の新車が高品質のため、「現車を見ないで車を買うハードルが低い」とみている。
また、ジョイカルジャパン(早川由紀夫社長、東京都千代田区)は23年1月、リース料をクレジットカードで支払えるようにした。キャッシュレス化のニーズが高まる中で、今では40~50%の契約者がカード払いを選んでいる。加盟店がカード会社に手数料を支払うデメリットはあるものの、同社はその負担を軽くする仕組みをつくって、加盟店をバックアップしている。
車両販売で実績を上げている整備事業者に共通することは何か。カーベル(伊藤一正社長、東京都中央区)の伊達義典執行役員は「やるべきことをやること」と話す。同社の「新車市場」に加盟した事業者は、最初に研修を受ける。「ここで学んだことをその通りに実行できる加盟店は成果が出ている」という。ジョイカルジャパンの早川社長も、「実績を上げる加盟店の条件の一つに本部の提案を素直に行うこと」を挙げる。
また、全日本ロータス同友会(小川晃一会長)の関連企業でリース商品を取り扱うロートピア(東京都港区)の田邉寿彦社長は、「店づくりや宣伝などでリースに取り組んでいることを前面に打ち出している同友企業が実績を上げている」としている。それが難しい同友企業には「車検などで入庫した顧客にリース販売の提案を勧めている」とし、サポートに力を入れている。
リース商品の一環であるものの、最近はやりのサブスクについて、カーコンビニ倶楽部の山崎執行役員は「定額払いで車を次々に取り替えられると感じる人もいるだろう」とみている。毎月の支払いで、利用し放題なイメージを与える宣伝文句が多いからだ。ロートピアの田邉社長はこうした商品設計が不可能ではないとするものの、「メンテナンスをしっかりメニュー化し、下取り額と新車の差額を次のリース料に組み込み、提案する仕組みができることが必要」と見立てる。
一方、MICの安田部長は「サブスクの売り方はインターネットによる販売と非常に相性がいい」とした上で、「車販のパワーバランスが大きく変わる可能性がある」と述べ、車の買い方が変化する可能性も指摘している。
月刊「整備戦略」11月号では特集「顧客の基盤はリースでつくる」を掲載します。