米国鉄鋼大手のUSスチールは4月12日(現地時間)に開催した臨時株主総会で、日本製鉄による買収を承認した。買収価格は141億ドル(約2兆1千億円)で、日鉄は当初合意していた買収価格から40%上乗せした。日鉄のUSスチール買収は、労働組合や一部の政治家が反対しており、先行き不透明だ。規制当局の承認が得られるかが次の関門となる。

臨時株主総会でUSスチールの株主の98%が賛成した。

買収が承認されたことについて日鉄の森高弘副社長は「買収完了に向けた大きな一歩が踏み出されたことは、大変喜ばしいこと」とコメント。その上で「目指すのは、当初から一貫して明確で、設備投資の拡大や先進技術の提供を通じて、関係するすべてのステークホルダーの利益のため、米国市場でUSスチールを支えて成長させること」と、買収が米国鉄鋼産業のメリットになることを強調した。

日鉄のUSスチール買収が実現すれば、両社合計の粗鋼生産能力は年間約5900万トンで、世界3位の鉄鋼メーカーグループとなる。実現すれば日本の自動車メーカーは米国での鋼材の調達先が広がる。

ただ、全米鉄鋼労働組合(USW)が外資である日鉄の買収に明確に反対しているのに加え、米大統領選を控えて、バイデン大統領もUSWに配慮して買収に消極的な見方を示している。トランプ元大統領も買収に否定的な意見を持つ。

USスチール株主から承認を得たことから、日鉄は今年9月ごろまでに買収手続きを完了させたい意向だが、先行きは不透明な状況が続く。

(編集委員 野元 政宏)